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<title>この世の果ての、さらに向こうに</title>
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<description>厨二病の棲家</description>
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<title>ゲーム／太閤立志伝５リプレイ記「葛西編」</title>
<description> １５４９年　１０月　　俺の名は晴信、葛西晴信１６才だ。　親父は葛西家の当主で１５代目、俺で１６代目ってことで結構古い家柄なんだぜ？　まあそんなものは今の時代にはくそみたいなもんで、古いものほど置いていかれる時代だ。　なんせ今は戦国って言うぐらい世の中殺伐としていやがる。　まあ、奥州はどっちかと言うと平和な方さ。　周りは親戚縁者の大名もいるし、そういう血筋関係で固めているから、野望ありきで侵略するよ
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<![CDATA[ １５４９年　１０月<br />　<br />　俺の名は晴信、葛西晴信１６才だ。<br />　親父は葛西家の当主で１５代目、俺で１６代目ってことで結構古い家柄なんだぜ？<br />　まあそんなものは今の時代にはくそみたいなもんで、古いものほど置いていかれる時代だ。<br />　なんせ今は戦国って言うぐらい世の中殺伐としていやがる。<br />　まあ、奥州はどっちかと言うと平和な方さ。<br />　周りは親戚縁者の大名もいるし、そういう血筋関係で固めているから、野望ありきで侵略するような奴はまずいない。<br />　葛西家も隣の大崎家と剣呑な仲だけど、今の所、正面から戦なんて事は滅多に起きない。<br />　なんせ、両家とも隣の伊達家と同盟を結んでいるし、本来なら同胞の一部だろって思うんだけど、こればかりは俺たちと向こうの家の問題みたいで伊達家は介入してこない。<br /><br />　んじゃ、ちと葛西家のことについて話しておこうか。<br />　俺は葛西家の嫡男だが、大名なんて器じゃないと今さらながらに痛感している。<br />　能力だって足らないし、今の所、親父の晴胤が立派に治めている。<br />　目だった家臣はいないけど、弟の一馬が今年元服して城に入っている。<br />　とは言っても、身分は足軽組頭で一個しか違わないのに俺は家老だ。<br />　妾腹の子でも息子なのに大きな違いがあったが、俺にとっては大切な弟であることに違いはない。<br />　あいつはもっと出世して大きなことをやれる人間になってほしい。<br />　できれば、俺なんかじゃなくあいつが家を継ぐのも悪くないと思ってる。<br /><br />　今は平和な時代じゃない。<br />　戦乱はいつだって近くで起こっているんだ。<br />　武士が武力を持って、同じ武力で対抗しなければ生き残れない。<br />　さて、そろそろ評定の時間だから行ってくるぜ。<br /><hr size="1" />　　<br />　京の町を移動登録して移動。<br />　普通の足だと寺池城から京まで９日ほどかかります。<br />　帰りも同じなので実質ぷらぷらできるのは４０日という制限がつきますが、京方面でしか学べないスキルがあることを考えると仕方がありません。<br />　移動方法の改善は馬を手に入れるか、水軍スキルを上げるのみです。<br /><br />　南蛮寺で修行を選択。<br />　寺池城に帰還すると評定ぎりぎりでした。<br />　セフセフ。<br />　<br />同年　１１月<br /><br />　初の評定で兵糧売却を受ける。<br />　仙台の町で三千石売り払い１７１９貫を手にする。<br />　ちなみに晴信は算術スキルを保有しているので、安く買い高く売るをできるので序盤は中々使えるのです。<br />　この金を持って京に行きます。<br />　座で茜（１２０／１３７９貫）を持てるだけ購入、石山の町の座で売ります(１２０／３２３８貫)。　　<br />　京に戻って座で茶を購入(１５０／２７３６貫)、石山の町で(１５０／４６７０貫)で売却します。<br />　石山と堺の町を移動登録します。<br />　手持ちが５６００貫になったので買い物に行きます。<br />　商家で５貫の一般和書をとりあえず買います。<br />　次に茶人宅にいき利休から茶壷を購入(価値５)。<br />　余った時間で利休から茶を学ぶことにします。<br /><br />　茶道を１レベルゲット。<br />　一度京に入り南蛮寺で開墾を学ぶ。<br />　開墾を１レベルゲット。<br /><br />　そろそろタイムアウトなので戻ります。<br />　親父殿にいくら稼いできたのか聞かれたので１２００貫だと言って渡してやります。<br />　とても嘘つきでありますが、今後の活動資金は多めにあったほうがいい。<br />　それにもう家老なので功績はいらんのです。<br /><hr size="1" /><br />　そんなわけで、年が明けたんで城に参内するか。　　<br />　今年も京でめいっぱい遊ぶのが俺の目標！<br />　お仕事万歳だぜ。<br />　<hr size="1" /><br />　そんなわけで１５４９年のリポート終了。<br /><br />　セーブ中……<br /><br />　一年分を一記事にすると長くなりそうです。<br />　端折れるところは端折るかもしれないな。<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-157.html">前に戻る</a> ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
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<title>ゲーム／太閤立志伝５リプレイ記「葛西編」</title>
<description> 　このページは書き物というよりゲームのリプレイとなります。　遊んでいるゲームは太閤立志伝５（ＰＳ２版）です。　管理人のデータプレイ時間：累計でおよそ１０００時間程度だと思われる傾向：主に武士プレイが多く、勢力図を塗り替えるのが大好き。　　　　ミニゲームの系統は好きではないのでカットしている。　今回は私の傾向通りに武将プレイをすることにします。　今までやったことのなかった趣向でリプレイすることでゲー
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<![CDATA[ 　このページは書き物というよりゲームのリプレイとなります。<br />　遊んでいるゲームは太閤立志伝５（ＰＳ２版）です。<br />　<br />管理人のデータ<br />プレイ時間：累計でおよそ１０００時間程度だと思われる<br />傾向：主に武士プレイが多く、勢力図を塗り替えるのが大好き。<br />　　　　ミニゲームの系統は好きではないのでカットしている。<br /><br />　今回は私の傾向通りに武将プレイをすることにします。<br />　今までやったことのなかった趣向でリプレイすることでゲームの魅力を伝えられたら幸いです。<br />　<br /><br />「新武将で天下統一」<br />　<br />　ありふれていますがちょっと捻ることにしました。<br />　目標と問題点を書きます。<br /><br />①新武将に大名の跡を継がせる。<br />　この条件を満たす大名家はあまりありません。<br />　一人だけ大名という人もいますが、寿命で死ぬまでが長かったりするので中々難しいです。<br />②そこそこ有能な武将になるように教育する。<br />　プレイヤー武将が別キャラを鍛えるには城主か大名でなくてはいけないか、同じ城に仕える武将でなければならない（理由はプレイヤー武将が同じ城にいれば評定でスキル習得の修行選択が出るから）。<br />　今回はプレイヤー武将が家老以下の階級であることが望ましい。<br />　そこそこ有能になるには一〇年は見ないと達成できない。<br />③プレイヤー武将は既存の武将で大名の跡取りである。<br />　この条件で一人っ子なら完璧な条件になる。<br /><br />行動の順番と予定表<br />①開始時に大名の城にプレイヤー武将と新武将の二人だけ。<br />②新武将が修行に集中できるように他の仕事は総て潰す。<br />③修行でスキルを習得して階級が上がった新武将の仕事をなるべく潰しつつ修行を選択させるように仕向ける。<br />④大名が寿命で亡くなる時期に複数セーブを行い、死亡する直前にプレイヤー武将は大名の元から離反して野に下る。<br />⑤新武将が大名になったら、プレイヤー武将は新大名に仕える。<br /><br />　というプランのつもり。<br />　多分これならうまくいくはずです。<br />　プレイヤー武将（大名の嫡子）だと新武将よりも優先されるのか、新武将が大名の子で年上でもプレイヤー武将が大名になってしまうようです。<br /><br />　　　　<br />　そんなわけで条件に当てはまる大名家を探しました。<br />　一応、年代は古い方から始めます。<br />　１５４９年の時点でもっとも有力な候補が一家ありました。<br />　奥州の葛西家が条件に当てはまり、大名の寿命も１５５５年となっています。<br />　これは死亡時期は多少ずれますが（５～１０年らしい）、条件としてはばっちりではないでしょうか。<br />　ついでに大崎家という弱小ですが城二つを所有する敵がいます。<br />　頼りにはならないけど伊達家が同盟しているのでかなり好条件と言えるでしょう。<br />　そんなわけでプレイヤー武将は葛西家の嫡男の葛西晴信（家老／１６才）を選択し、弟か兄を一人作成します。<br /><br />「新武将作成」　　　<br /><br />　さて、とりあえず弟を作成することにします。<br />　内政は兄と勧誘する家臣でサポートするので、大名となる弟には武力に秀でたキャラクターに成長してもらうのが一番いいでしょう。<br /><br />弟データ<br />武将タイプ：猛将<br />気性：短気<br />精神：豪胆<br />主義：現実<br />行動：軽率<br />義理：不義理<br />野心：１００<br /><br />　という感じ。<br />　大名になったら積極的な攻勢に出そうなデータになりました。<br />　次回あたりからＵＰしていくか、しばらくプレイに没頭するかもしれません。　　　　　<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-158.html" title="続きを読む">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
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<title></title>
<description> 最近よく聴いてます過去に書いたもの＋&amp;alpha;を雑文としてまとめてあげるコーナーを設けました。 書き直し部分も多いので内容も変更されています。 ファンタジー／馬と少年 ① 青春／手紙 ① 禁断愛／兄妹 ① 不思議／歩く死体 ① 旅／ルルカの旅 ① 音楽／おお！ジブリール ① を掲載
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<![CDATA[ <center><script type="text/javascript" src="http://ext.nicovideo.jp/thumb_watch/sm3709688?w=320&h=240"></script><br />最近よく聴いてます</center><p><br /><br /><br />過去に書いたもの＋&alpha;を雑文としてまとめてあげるコーナーを設けました。 <br />書き直し部分も多いので内容も変更されています。 <br /><br />ファンタジー／馬と少年 ① <br />青春／手紙 ① <br />禁断愛／兄妹 ① <br />不思議／歩く死体 ① <br />旅／ルルカの旅 ① <br />音楽／おお！ジブリール ① </p><p>を掲載</p><p><br /></p> ]]>
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<dc:subject>未分類</dc:subject>
<dc:date>2009-11-25T09:02:18+09:00</dc:date>
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<title>音楽／おおジブリール！</title>
<description> －雪中の奇跡－　天使の羽が舞い降りてくるように……　雪が降り始めていた。　市庁舎の玄関から出た男がふぅと息を吐き出すと、たちまちのうちに白い息に変わった。　銀の懐中時計を見てから、走り出した紳士が階段下に張っていた氷に足を捕られて滑った。　腰を打って、苦痛に声を上げる。　眼鏡を落としたことに気がついて、眼鏡を探して地面に這いつくばった。「ああ、何てこった、こんな日に！」　プップッーと音を鳴らして、タク
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<![CDATA[ <center>－雪中の奇跡－</center><br /><br /><br />　天使の羽が舞い降りてくるように……<br /><br />　雪が降り始めていた。<br />　市庁舎の玄関から出た男がふぅと息を吐き出すと、たちまちのうちに白い息に変わった。<br />　銀の懐中時計を見てから、走り出した紳士が階段下に張っていた氷に足を捕られて滑った。<br />　腰を打って、苦痛に声を上げる。<br />　眼鏡を落としたことに気がついて、眼鏡を探して地面に這いつくばった。<br />「ああ、何てこった、こんな日に！」<br />　プップッーと音を鳴らして、タクシーから顔を出した男が怒鳴った。<br />「おい！　あんたひかれたいのか」<br />「眼鏡が落ちたんだよ。ああ、もうこんなことしてる場合じゃないのに！　妻が今晩は出産なんだよ！　私は行かなくちゃならない病院に！」<br />　紳士が叫んで地面と睨めっこしている。　<br />　ため息をついて、タクシーの運転手は降りてすぐそこに落ちていた眼鏡を拾い上げる。<br />　少しひびが入っているが平気だろう。<br />「おい、あんた。これだろ」<br />　男が差し出した眼鏡を紳士が手にとって顔にかける。<br />「ああ、そうそう、感謝しますミスター。ありがとう。ではこれで」<br />「待て待て、あんた。奥さんが出産だって？　どこの病院だよ」<br />「セント・マーチ・シンクレア病院だよ」<br />「おいおい、郊外の方じゃないか。どうやっていくつもりだい？」<br />「バスを乗り継いで行くつもりだ」<br />「時間がかかりすぎる。あんた乗れよ」<br />「いや、しかし……」<br />「いいから乗れよ！　今日はもう仕事になんねえから帰る所だったんだよ。病院の方に家があるついでに送ってやるだけさ」<br />　紳士は男をまじまじと見て頷いた。<br />「お言葉に甘えさせてもらいます。ミスター…」　<br />「ラリだよ。ラリ・フェルセン」<br />「私はミハイル・シュルヴェステル。あなたは恩人だ」　　　<br />　タクシーに乗り込んで走り出すと、空はますます重い雲が覆っていて、雪はどんどん強くなってきていた。<br />「どうだい、さっきチェーン巻き直したところさ。そういやあんた、フィンランド人だろ」<br />「ミスター…」<br />「ラリでいいさ、ミスターなんて堅苦しいのは嫌いなんだよ」<br />「ではラリ、あなたも同郷ですよね」<br />「ああ、俺は移民なんだけどな。世界大戦のときに俺の婆さんがアメリカに移住したんだ。ボストンで爺さんと知り合って、俺の親父が生まれたんだ。親父は生まれはアメリカだったけど生粋のフィンランド人の魂を持ってた。俺は親父の背中を見て育った」<br />「立派なお父さんだったんですね」<br />「ああそうさ、親父から教わったことでまだ実践したことがないことがあったんだ」<br />「と、言うと？」<br />　ラリは一瞬だけ隣のミハイルに目配せして言った。<br />「同胞を助けるって事さ！　こんな日だ。雪中の奇跡ってやつを俺は信じてる」<br />「なるほど、ラリ、あなたはまさに同胞だよ」<br /><br /><br />　天使の羽が舞い降りる。<br />　それは祝福、冷たい雪も生まれてくる奇跡の前に賛美の羽に変わる。<br />　おお、ガヴリエルよ！<br />　今一人、神の恵みを受けし子が産まれました。<br /><br /><br />　病院の光が白く雪が積もった地面を照らしていた。<br />　タクシーから降りた男が玄関に駆け込んでいく。<br />　ゆっくりとドアを開けて空を見上げた男は今こそ奇跡が起こっているのを見ていた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />ミハイル・シュルヴェステル<br />ラリ・フェルセン<br /><hr size="1" />　 ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
<dc:date>2009-11-25T06:55:03+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>旅／ルルカの旅</title>
<description> 　回る回る車輪が回る。　雨が降っても、何があっても旅は続くよ。　森も山も川も越えて、次の町に行くよ。　沢山の町と沢山の人が通り過ぎて行くよ。　悲しい事も嬉しい事も通り過ぎて行くよ。　車輪は回り続けるよ。　わだちを踏みつけ大地を走るよ。　稲穂が揺れて収穫の時期だよ。　黄金の波が目の前に広がるよ。　とてもとても、綺麗だね。　風が吹くよ。　海の風が吹きつける町。　沢山の船が漁に出るよ。　恵みの海が出迎え
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<![CDATA[ 　回る回る車輪が回る。<br />　雨が降っても、何があっても旅は続くよ。<br />　森も山も川も越えて、次の町に行くよ。<br />　沢山の町と沢山の人が通り過ぎて行くよ。<br />　悲しい事も嬉しい事も通り過ぎて行くよ。<br /><br />　車輪は回り続けるよ。<br />　わだちを踏みつけ大地を走るよ。<br />　稲穂が揺れて収穫の時期だよ。<br />　黄金の波が目の前に広がるよ。<br />　とてもとても、綺麗だね。<br /><br />　風が吹くよ。<br />　海の風が吹きつける町。<br />　沢山の船が漁に出るよ。<br />　恵みの海が出迎えるよ。<br />　とてもとても、大きいね。<br />　<br />　雪が降るよ。<br />　街角の待合室。<br />　暖かいストーブが薪を真っ赤にしてる。<br />　隣のお婆さんがお芋をくれたよ。<br />　とてもとても、美味しかったよ。<br /><br />　まだまだ車輪は回るよ。<br />　父さんと私を乗せて旅は続くよ。<br />　ずっとずっと終らない旅。<br />　父さんは商人で芸人さん。<br />　ルルカは旅をしながら父さんみたいになるのが夢なのです。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />父さん<br />ルルカ<br /><hr size="1" /> ]]>
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<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>禁断愛／兄妹</title>
<description> 　黒い服の少女が礼拝堂で祈りを捧げている。　　　主よ私は罪を犯しました。　兄を愛するとことを知った私は禁断の果実を口にしたのです。　罪は罰せられなければなりません。　　どうか主よ、私を罰してください。　この身は穢れているのです。　どうか主よ、罪を背負った子はどう償えばいいのでしょう。　祈りに神は答えはしない。　その娘の足元に横たわるその人の顔はとても穏やかで眠っているように見えた。　朽ち果てた教会
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<![CDATA[ 　黒い服の少女が礼拝堂で祈りを捧げている。　<br />　<br /><br />　主よ私は罪を犯しました。<br />　兄を愛するとことを知った私は禁断の果実を口にしたのです。<br />　罪は罰せられなければなりません。<br />　<br />　どうか主よ、私を罰してください。<br />　この身は穢れているのです。<br />　どうか主よ、罪を背負った子はどう償えばいいのでしょう。<br /><br /><br />　祈りに神は答えはしない。<br /><br /><br />　その娘の足元に横たわるその人の顔はとても穏やかで眠っているように見えた。<br />　朽ち果てた教会の窓から注ぐ光が彼を祝福しているようだった。<br />　涙に濡れた瞳で少女は彼を見つめてその頬を撫でる。<br />　その人の胸に赤い華が咲いていて、鈍く光る刃が胸に突き刺さっていた。<br /><hr size="1" /><br /><br /><center>ただ一人の人を想うあまり狂ってしまえたらよかった</center><br /><br /><br />　漠然と繰り返される無意味な日常の中で、彼の存在は唯一在ることを自覚させた。<br />　二人は一つで、一つで二人、近くに在って遠い皮肉な関係。<br />　どちらが欠けてもいけないのだ。<br />　私たちは生まれたときからお互いに足りないピースを持って生まれた。<br />　お互いが重なれば……<br />　ほら、私たちは一つなんだ。<br /><br />　<br />　あの日、私はパンドラの箱を開けてしまいました。<br />　悪魔の誘惑に負けて、否、誘惑を望んだのは誰だったのでしょう。<br /><hr size="1" /><br />　１４歳の誕生日を迎える前日、黒崎来夏は兄に告白する決意をした。<br />　その気持ちを伝えるのに一時間を費やして、ようやく携帯の番号を呼び出した。<br />「兄さん、明日なんだけど。一緒に帰らない？」<br />　己の滑稽さに震えて、来夏はただそれだけを伝えて電話を切った。<br />　直接話して伝えたかった。<br />　一緒に帰ろうなんて小学生か私は……<br />　自分自身に憤慨して肌触りのよいクッションを顔に押し付ける。<br />　干した布団の匂いと柔らかさを感じながら、耳に時計の針の立てる音がやけに大きく響いた。<br /><br />　いつからだろう、兄の一樹と別々の部屋で暮らすようになったか、よく思い出せない。<br />　それは数年前の夏休みの日とだけ覚えていた。<br />　来夏が一樹を意識するようになったのはその頃だったかもしれない。<br /><br />　双子の兄の一樹とは不思議なくらい何でも共有していた。<br />　二人は誕生日に貰うプレゼントはいつも同じものを貰っていた。<br />　男の子なのに女の子のものを貰っても平気だった。<br />　だって、それは二人にとってはおままごとの道具が増えて返って喜んでいたくらいだ。<br />　両親が他に欲しい物があるだろうにと言ったが、特に示し合わなくても二人は同じ物でよかった。<br />　来夏が女の子らしいものを欲しい時は祖父にねだった。<br />　一樹も男の子らしいものが欲しいときは祖母にねだった。<br />　二人は孫に甘かったから、そんな風にバランスを常に保っていた。<br /><br />　一樹は綺麗な子だった。<br />　来夏は一樹に自分の服を着せて、一緒におままごとをするのが大好きだった。<br />　両親は共働きだったから、一緒に遊ぶときはいつも二人きりで、一樹が女の子の格好をして遊ぶことを知っているのは二人だけだった。<br />　運悪く、母親と会ってしまったときだって一樹は来夏の振りをして誤魔化した。<br />　その当時の二人はよく似ていたのだ。　<br /><br />　小学生の夏休み…<br />　二人は屋根裏部屋で着替えをしていた。<br />　一樹に女の子の服を着せて、その耳元まで伸びた髪にリボンを編みこんで、鏡合わせに見ると、まるで双子の姉妹がいるかのようだった。<br />　来夏は自分の服を着せたので下着姿だった。<br />　そのわずかに膨らみかけた胸が一樹の腕に当たって、一樹は恥ずかしそうに俯く。<br />　来夏は恥ずかしくなどなかった。<br />　一樹は来夏の分身なのだから、たった一人しかいない存在なのだから、一樹もそうだと信じていた。<br />「恥ずかしいよ…　もうやめよう。おかしいんだ僕たち」<br />「なんで？　どうして」<br />　一樹が何でそんなことを言うのか分からない。<br />　私たちはこれまでうまくやってきたのに。<br />　その答えはすぐに出た。<br />「いつも二人一緒の双子なんて気持ち悪いって……　先生が他の人に言ってるのを聞いた…　クラスの子もなんかおかしいって…」<br />「一樹はどう思ってるの？」<br />「僕は…　みんなから言われたからじゃなくて…　女の子の格好するの恥ずかしいって…」<br />「そう…　脱いで、脱いでよ…　もうあっち行ってよ」<br />　来夏は哀しくなって、何故流れるのか分からない涙に咽びながら、一樹を突き放した。<br />　もぞもぞと服を脱いだ一樹は痩せた体つきの少年だった。<br />　自分の服を持って階段に向き直った一樹が動きを止めた。<br />　来夏が振り返ると、そこには驚きから怒りの表情に固めた顔の母親が立っていた。　<br />「あななたち。何をしているの？　二人とも服を着てこっちにいらっしゃい」<br />　押し殺したようで有無を言わさない声の響きだった。<br />　私たちのおままごとはその日を境に終わりを告げた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />一樹<br />来夏<br />母親<br /> ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
<dc:date>2009-11-24T04:44:22+09:00</dc:date>
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<title>不思議／歩く死体</title>
<description> 　覚醒した気だるい体を二の腕で抱えるように男はベッドから起き上がった。　シーツの衣擦れの音がやけに耳に残る。　それはまだ真新しい匂いがした。　まず起きて、白いシャツにランニングパンツを履いているのを確認する。　はっきりしないが、これが自分のものであるという自覚がまったくなかった。　室内の空気の冷たさに体をぶるりと震わせ、シーツを手繰り寄せて、体に巻きつけるようにして再びベッドに座り込んだ。　ここは
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<![CDATA[ 　覚醒した気だるい体を二の腕で抱えるように男はベッドから起き上がった。<br />　シーツの衣擦れの音がやけに耳に残る。<br />　それはまだ真新しい匂いがした。<br /><br />　まず起きて、白いシャツにランニングパンツを履いているのを確認する。<br />　はっきりしないが、これが自分のものであるという自覚がまったくなかった。<br /><br />　室内の空気の冷たさに体をぶるりと震わせ、シーツを手繰り寄せて、体に巻きつけるようにして再びベッドに座り込んだ。<br />　ここは、いったい？　どこだ。<br />　見慣れない家具と配置と生活感がまったくない部屋。<br />　頭がはっきりとせずに、脳の働きが低下しているのを感じた。<br />　部屋は暗く、壁にかけられている時計の針は見えない。<br />　唯一、窓の外から差し込む光は薄暗い。<br /><br />　耳を澄ますと水の音が聞こえてくる。<br />　雨が降っているのだと彼はそう認識し、痛む頭に手を当てた。<br />　わずかな香水の匂いが香る……<br />　香水？　<br />　彼はまだはっきりしない頭でその甘い匂いの残り香を嗅ぐ。<br />　何の匂いかわからない。<br />　花の匂いだろうか？<br /><br />　喉が渇いていた。<br />　男はシーツに身を包んだままキッチンに立ってコップを探す。<br />　食器棚はまったく何も入っていなかった。<br />　何故か、戸棚の中に一個だけあったコップを取り出し、蛇口を乱暴に捻ると勢いよく水が飛び出した。<br />　濡れるのも構わずにコップに蛇口を当てると、水が溢れて飛び散った。<br />　それに構わずに一気に飲み干す。<br />　頬に水滴が垂れて、そのままシャツを濡らす。<br />　蛇口を閉じて、ぽつぽつと蛇口から水滴が落ちる。<br />　ステンレスの板に反響音が響く。<br />　水の音……<br />　雨じゃない。<br />　これはシャワーの音だと男は気がついた。<br />　暗い部屋の向こうのシャワールームからわずかに明かりが漏れている。<br />　水を打ちつける音を聴きながら、男は思考を巡らせた。<br /><br />　どうしてシャワーが付けっ放しに？<br />　昨日俺はシャワーを浴びたのか？<br />　着ているシャツの匂いを嗅ぐ。<br />　臭くはない。<br />　不快感も無い。<br />　何故、俺は見知らぬ部屋で寝ていたのか？<br />　思い出せない。<br />　酒を飲んで誰か知らない人の家に忍び込んで寝ていた。<br />　ありえないことだ。<br />　では、ここの住人はどこに行ったのだ。<br />　酒を飲んだとして、誰かと意気投合して飲み潰れて止めてもらった。<br />　酒の匂いを自分の息からは感じない。<br />　わからない、さっぱりわからなかった。<br /><br />　ひどく気分が悪かった。<br />　ドアの向こうのシャワールームの光がやけに眩しい。<br />　ふと、腕を伸ばしてトントンと叩く。<br />「すいません。誰かいませんか」<br />　間抜けな台詞だなと思う。<br />　返事は無く、息を一つ吐いて、男はドアを開け放つ。<br /><br />　水飛沫が飛び散って、タイルから排水溝に流れ込む音を聞く。<br />　熱い湯気が立ちこめていて、水面が揺れる。<br />　揺ら揺らと赤い水がバスタブから零れる。<br />　長く黒い髪が水中を漂って蛇のように浮かんでいる。<br />　一人の若い女だった。<br />　胸に刃渡りのあるナイフを突き立てられて、バスタブに沈み込むように漂っていた。<br /><br />　男は呆然と立ち尽くしたまま思考する。<br />　この女は誰なんだ？<br />　水が流れて排水溝に吸い込まれる音を聞きながら自問自答する。<br />　俺はいったい誰なんだ？<br />　誰？<br />　誰だと？<br />　俺は…<br />　いったい誰なんだ？<br />　男は自分の名前が思い出せない。<br />　名前、年齢、職業、住所…<br />　すべてが空白だった。<br />　<hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />記憶喪失の男<br />死体の女 ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
<dc:date>2009-11-24T03:59:15+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>青春／手紙</title>
<description> 　拝啓　近頃、めっきり寒くなりました。　こっちはもぉ紅葉の時期で山も色づき始めたんやで。　春郎ちゃんは東京で元気にしとっとぉ？　うちは今年もこっちで年を取ってしまったわぁ…　春郎ちゃんはこっちに帰らんと？　去年はみんなの集まりのときも欠席してたでしょ？　継ちゃんが春郎は変わった、冷たくなったってぼやいとっちゃとよー。　仕事忙しいんよね…　わかっとるけど、うち、会いたいよ、春郎ちゃん。　昨日、春郎ちゃ
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<![CDATA[ 　拝啓<br />　近頃、めっきり寒くなりました。<br /><br />　こっちはもぉ紅葉の時期で山も色づき始めたんやで。<br />　春郎ちゃんは東京で元気にしとっとぉ？<br />　うちは今年もこっちで年を取ってしまったわぁ…<br />　春郎ちゃんはこっちに帰らんと？<br />　去年はみんなの集まりのときも欠席してたでしょ？<br />　継ちゃんが春郎は変わった、冷たくなったってぼやいとっちゃとよー。<br />　仕事忙しいんよね…<br />　わかっとるけど、うち、会いたいよ、春郎ちゃん。<br /><br /><br />　昨日、春郎ちゃんのお母ちゃんに会ったとよ。<br />　うち、あのおばちゃんの顔好きやわぁ。<br />　ほら、笑うと笑窪ができて、春郎ちゃんと同じ顔になるんよ。<br /><br />　おばちゃん、畑仕事の帰りでうちに気がついてね、一緒にお茶したよ。<br />　昔、おばちゃんと私らでよく焼きいも焼いたドラム缶、まだあるとよー。<br />　あそこでおばちゃんと焼きいも焼いて食べて美味しかったわ。<br />　春郎ちゃんにはあげへんよ、あげへんからね。　<br />　あげへんから、帰ってきて。<br />　<br /><br />　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　会いたい　何度繰り返せば春郎ちゃんに会えますか？<br /><br /><br />　ごめんなさい…<br />　返事、書かんでええよ。<br />　我侭をごめんなさい。<br /><br />　お正月に東京行く予定。<br />　ほら、前にうちを海で写真撮ってくれた人おったやろ？<br />　あの人ちょっとあっちで有名な和服美人ていう女性誌のカメラマンやっとぉよ。<br />　あの人がうちをモデルに撮らせて欲しいて何度も何度も手紙でおかしいけど拝み倒すんよ。<br />　それでね…<br /><hr size="1" /><br />　春郎はその先を読まずに机の上に放り出した。<br />　指先に挟んだタバコから紫煙が上がって、視界を曇らせる。<br /><br />　俺にどないせーゆうんよ…<br /><br />　年末は特に忙しい。<br />　仕事に追われ、追われて、気がつけば帰るのは深夜。<br />　誰もいないアパートでインスタントのラーメンを啜る毎日。<br />　いつしか、東京の暮らしは春郎の心を腐らせていた。<br />　故郷からの匂いがする手紙も届け物も、いつの間にか、空虚なこの部屋では異質なものになっていた。<br /><br />　机にうつ伏せたまま、会いたい、と書かれた手紙の字をなぞる。<br />　白い照明が闇の中に裸の電球を晒して春郎の顔を照らす。<br />　遥は変わらんとね。<br />　春郎は遥の素朴な字が好きだ。<br />　東京で一緒に暮らそう。<br />　そんな春郎の望みも遥を動かすことはできなかった。<br /><br /><br />　うちは、うちは…<br />　捨てられんとよ。<br />　春郎ちゃんみたいにここを捨てられんとよ！<br />　ここで生まれて、育って、みんなと出会って、春郎ちゃんに出会えて、うち、とても幸せだった。<br />　でも春郎ちゃんはうちと違う。<br />　いつも、ここから出て行くことばかり…<br />　でも春郎ちゃんは、夢をうちのために諦めたらいかんよ？<br />　東京で頑張って夢を掴むって昔から言ってた春郎ちゃんを最後まで応援するのはうちでいたいから。<br />　他の人が何を言ったって、貫いて欲しいから…<br />　だから、だから、さようなら…<br /><br /><br />　ある冬の別れのヒトコマ…<br />　高校を出て東京に来て就職して、俺にはいったい何が残った？<br />　思考を停止する。<br />　タバコの煙を肺に吸い込む。<br /><br />　何が残った？<br /><br />　振り返るのが怖かった。<br />　そこには過去に捨てたものの残骸ばかり。<br />　俺は何を手に入れたかったのか……<br /><br />　携帯の呼び出し音が鳴り響く。<br />　すでに耳に馴染んだメロディ。<br />　はいと出ると、電話の向こうから女の囁くような艶やかな声が聞こえた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />春郎(はるお)・・・・・一人の男<br />遥(はるか)・・・・・故郷の女<br />女・・・・・東京の女 ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
<dc:date>2009-11-23T09:19:16+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>ファンタジー／馬と少年</title>
<description> 　ハイランドの馬飼いたちが集う市では、各地から集められてきた馬が競売にかけられる。　今年、１０才になったばかりの少年クラウスは期待に胸を膨らませて、父であるヤーコブと一緒に競りにきていた。　高地の馬飼いの多くが集うこの市は一年に一度開催され、この地域では数少ない娯楽と祭りも提供してくれる、男の子にとってはとても楽しみな市だった。　何よりも大好きな馬がよりどりみどりに競りに並んで、より高額な落札をし
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<![CDATA[ 　ハイランドの馬飼いたちが集う市では、各地から集められてきた馬が競売にかけられる。<br />　今年、１０才になったばかりの少年クラウスは期待に胸を膨らませて、父であるヤーコブと一緒に競りにきていた。<br />　高地の馬飼いの多くが集うこの市は一年に一度開催され、この地域では数少ない娯楽と祭りも提供してくれる、男の子にとってはとても楽しみな市だった。<br />　何よりも大好きな馬がよりどりみどりに競りに並んで、より高額な落札をした人がどんな馬を手に入れたのかを見るのが好きだった。<br />　父さんはと言うと、うちはとてもお金持ちではないので競りにかけられるような高額の馬を手に入れることはできないし、毎年毎年、種馬目当てで市に来ているので、それほど立派でもない牡馬か仔馬を数頭仕入れるのが関の山だった。<br />　それでも馬飼いとして、父さんは立派な馬を育てたいという気持ちは持っていたし、息子のクラウスも自分は将来は馬飼いになって強くて立派な馬に乗りたいという願望を持っていた。<br />　ただ、今は馬に乗るのが大好きな一人の少年でしかなかったけれど。<br />　今年の馬の市は前年よりも多くの馬と商人が集まっているという話を聞いて好奇心に駆られたのだ。<br />　留守番していなければならなかったのを父さんに頼み込んで馬車に乗せて貰ったのだ。<br /><br /><br />　母のアンナが一人留守番に残って亭主と息子を送り出した。<br />　貧しい小さな家と煉瓦の壁の続く丘、厩舎と牧草地が広がる平原、それが十年生きたクラウスのすべてだった。<br />　出かける前に母さんが編んだ護り袋には、馬の尻尾の毛から編んだリングが入っている。<br />　馬の神様が息子をお守りくださるようにと一晩かけて編んだ護り袋だった。<br />　それと小さなサックに荷物を詰め込んでクラウスは初めての小さな旅に心を躍らせたのだ。<br /><br /><br />　競売所では父さんの顔馴染みの男が今年の馬の話をしながら賭けをしている。<br />　父さんも家ではいつも仏頂面のくせに、今は陽気なやり取りをしていて、片手のマグカップにはビールの泡が乗っかっていた。　<br />　クラウスはそんな大人たちは放って置いて、さっそく綺麗な馬を見つけてどきどきしていた。<br />　馬飼いとしての興味もあるけれど、やっぱり、男の子の夢としてああいう馬に乗ってみたいという気持ちが打ち勝つのだ。<br />　競売は円形の闘技場で馬を見せて引き連れながら行われる。<br />　順番に馬と乗り手が闘技場を周って観衆と馬を買いに来た人たちに見せて回る。<br />　それが終わると競売の競りが始まるのだ。<br />　馬が登場するたびに会場は熱気を帯びていって、クラウスは夢中になって馬たちを眺めていた。<br />　今年一番の馬はきっとあの馬だな。<br />　少年といえど、クラウスは馬飼いとしての勘でさっきの綺麗な馬が一番だなと思ったのだ。<br />　父さんたちが賭けていたのは、どの馬が一番高く落札されるかという賭けだった。<br />　クラウスなら真っ先にあの馬に賭けていただろう。<br />　馬たちの披露が終わって競りが始まった。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />クラウス・・・・・少年<br />ヤーコブ・・・・・父さん<br /><hr size="1" />　 ]]>
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<dc:subject>雑文集</dc:subject>
<dc:date>2009-11-22T01:30:48+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　異様な冷たい空気が機内を侵食していた。　　寒さに鼻先がツンとして御影は激しく咽る。　俯いたまま力を失ったように座る御影の前には別の男が一人張り付いていた。　男は寒さに身を震わせながら、その目は怒りが支配していた。　見下ろす男と俯く少女、互いの口から白い息が漏れて、視界を曇らせる。　御影がわずかに身じろいで、冷たくなった手を擦り合わせると、銃身の一撃が肩に振り下ろされた。　本気で殴っていたら骨が折
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<![CDATA[ 　異様な冷たい空気が機内を侵食していた。<br />　<br />　寒さに鼻先がツンとして御影は激しく咽る。<br />　俯いたまま力を失ったように座る御影の前には別の男が一人張り付いていた。<br />　男は寒さに身を震わせながら、その目は怒りが支配していた。<br />　見下ろす男と俯く少女、互いの口から白い息が漏れて、視界を曇らせる。<br /><br />　御影がわずかに身じろいで、冷たくなった手を擦り合わせると、銃身の一撃が肩に振り下ろされた。<br />　本気で殴っていたら骨が折れると思うほどの痛みが肩に走って、衝撃を受けて倒れこんだ。<br />　声に出さない苦痛の呻き声を歯を食いしばって耐える。<br />　乱れた髪が口に入る。<br />　憎たらしい男が毛虫でも見るかのように御影を見ている。<br />　その屈辱と憎しみを心の糧にして燃やして意識を踏み止まらせる。<br /><br />　<br />　狂気は伝染する。<br />　犯人たちがもたらした混乱が乗客を汚染し、不安に包まれた乗客達の負の思考が犯人たちに感染する。<br />　通路に残った血痕の生々しい痕、引き摺られて死体はどこかへ運ばれていったが、あの射殺シーンが印象的過ぎて、機内は死の匂いに包まれている。　<br /><br />　大丈夫、まだ私は大丈夫だ。<br />　御影は心の中で呟きながら精神力を絶やさない。<br />　鬼とて人間に過ぎない。<br />　鍛えられているといっても今は生身でしかないのだ。<br />　体力は尽きかかっていたが、まだ心は屈していなかった。<br />　<br />　それよりも気がかりなのは、この旅客機はどこを飛んでいるのかということだ。<br />　御影の目には、機内に入り込んだ冷気は形を成して、緑色の霧に変わって漂っている。<br />　その霧が人に触れると、そこに霊が飛びついて遊んでいる。<br />　もっと霧が濃くなれば、恐らく霊魂は実体化するほどの霊力を持って容赦なく人に襲い掛かるだろう。<br />　ここは黄泉の境なのだ。<br />　どんな悪霊が潜んでいても不思議ではないが、予感めいたものを御影は感じ取っていた。<br />　これは罠なのだろうか？<br />　だとしたら、私たちはその網に絡み取られた獲物ということになる。<br />　人知を超えた悪意の存在……<br />　それほどの圧倒的な異界の怪物がこの旅客機を狙っていた？<br />　否、この旅客に乗る人物を捕らえようとしていた？<br />　あまりにも御影にとっても当たりすぎる回答に悪寒する。<br />　御園が長年に渡って手にしていたものを、今このときとばかりに手に入れようとする存在がいるのだということを肯定しがたいが事実と認識する。<br /><br />　ずっと視線を感じていた。<br />　ねっとりとまとわりつくような感覚が、その視線が通り過ぎるたびに全身を侵されていくような不快感が込み上げる。<br />　奴は探しているのだ。<br />　御影が死なない限り<strong>結界</strong>が解けることはない。<br />　魂とリンクさせた<strong>呪術環</strong>によって守られている。<br />　それを奴が見つけない限り、巴様は危険に晒されることはない。<br />　もう一人、気がかりなのは鋼様だが、この状況ではどうなっているのか確かめようもなかった。<br />　<br /><br />　通路の奥から二人がいる方に犯人の一人が近づいてくる。<br />　くちゃくちゃとガムを噛みながら、御影の前に立つ男の脇に立つ。<br />　二人の短いやり取りが聞こえるが、英語ではなかった。<br />　ガムを噛む男の視線が御影に向けられる。<br />　にやけた顔、だらしのない感情……<br />　乱れたスカートから伸びた健康的な女の足を男が見ている。<br />　男が考えている卑猥なことを一瞬で理解して、御影は無理な体勢で座り込んでる姿勢を少しでもまともに見せたかった。<br />　スカートの裾を少しでも整えたかった。<br />　未知の脅威よりも、今は目の前の男の行為に心が砕けそうだった。　　<br />　不意ににやけた男が番人の男に殴り飛ばされた。<br />　御影の前に立ち塞がる男が短い脅しの言葉を投げかけて、味方の男に銃を向けると、殴られた男は手を上げて慌てて下がると、汚い罵りの言葉を吐いて乱暴に立ち去った。<br /><br /><br />　守られた、とは思わないことにした。<br />　この男は自分の役割に忠実だっただけだ。<br />　何にせよ、この男から殴られたことは忘れないでおこうと御影は心に誓った。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・人質中<br />犯人たち・・・・・いらいら<br /><hr size="1" />　<br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-149.html" title="前に戻る">前に戻る</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-21T10:10:09+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶 </title>
<description> 　主犯格のリーダーを思わしき男が人質の頭に拳銃を突きつけている。　誰一人動けない。　通路を塞ぐ屈強な男たち。　スチュワーデスやパイロットたちは無事なのだろうか？　犯人の癖のある英語はよく聞き取れないが、あるテロリストグループの名前を連呼していた。　日本で捕まった大物テロリストが所属していた過激派グループで、そのトップの男を解放しなければ私たちを殺すというものだ。「俺たちの目的は同士の解放だ。もし聞
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<![CDATA[ 　主犯格のリーダーを思わしき男が人質の頭に拳銃を突きつけている。<br />　誰一人動けない。<br />　通路を塞ぐ屈強な男たち。<br />　スチュワーデスやパイロットたちは無事なのだろうか？<br />　犯人の癖のある英語はよく聞き取れないが、あるテロリストグループの名前を連呼していた。<br />　日本で捕まった大物テロリストが所属していた過激派グループで、そのトップの男を解放しなければ私たちを殺すというものだ。<br />「俺たちの目的は同士の解放だ。もし聞き入れないなら成田に降りた所で篭城して一人ずつ殺す。それでも聞き入れられないなら、全員殺したら、この機体ごと爆破してやる」　　<br />　そう言って男がシャツをたくし上げると、腹に巻かれた爆薬が目に入って、何人かの乗客が悲鳴を上げた。<br />　銃口は等しく乗客たちに向けられ微動だにしない。<br />　犯人たちの要求をここにいる誰もが適えられることはない。<br />　長いフライトの末に殺すと脅されて、誰一人動けるものはいなかった。<br />　<br />　ただ一人を除いて……　<br /><br />　御影は巴の手を握って、「いいですか、決してここから動いてはいけません」と囁くと、座席にリップクリームで印を刻んだ紋様に手をかざす。<br />「存在せし見えるものはここにはない。触れて触りてもここにはない。払え、払えよ。気の消失よ」<br />　御影の気を軸に<strong>人払いの結界</strong>をこの座席限定にかける。<br />　本来は広範囲にかける術を応用して、御影は巴の周りに<strong>結界</strong>を張ったのだ。<br />　無論、中からも外に出ることはできない術を仕込んであるから、巴の存在を犯人たちは知覚することもできない。<br /><br />　突然立ち上がった少女の姿に犯人たちは慌てて銃口を向けた。<br />「動くなと言っただろ！」<br />　六つの銃口が向けられているのに、少女はまったく怯んだ様子も恐れる気配もない。<br />　ゆっくりと両手を挙げると、悠然とリーダー格の男に視線を向けて、「その人を放して、私が代わりに人質になります」と告げた。<br /><br /><br /><br />「駄目よ！　御影ちゃん。危ないわ！」<br />　巴は御影の行動に驚愕して席を立とうとした。<br />　陰影のある空間が<strong>結界</strong>に触れた巴に見えて、それは巴のいる座席をすっぽりと覆っていた。<br />　中からその膜を叩いても、無音で音すら立てない。<br />　どうすることもできないまま、巴は固唾を呑んで見守るしかなかった。<br /><br />　　<br /><br />　銃を突きつけられているのに目の前の少女は、ただそのことを告げたまま動かない。<br /><br />　リーダー格の男は考える。<br />　人質にするなら理性的な方が俺たちには助かる。<br />　それに女一人ならば抵抗されても力で押さえつけられる容易い相手だ。<br />　瞬時にそう判断すると男は頷いた。<br />　その合図を仲間たちは了解したのか、銃口を御影から外して周囲に向けた。<br />　この人質に取った男はてんで駄目だ。<br />　失禁してズボンを濡らしたまま座り込んでいる男を見て、その背中を蹴飛ばすと、男はヒィと叫んで床に体を投げ出した。<br />　銃は人質の背中に突きつけたままだ。<br />「手を頭の後ろに組んで、目の前まできてうつ伏せになれ！」<br />「その前にその人を放して」<br />「駄目だ。言われたとおりにしろ」<br />「ＯＫ…　そっちに行くわ」<br />　御影は手を頭の後ろに組んだままゆっくりと近づく。<br />「止まれ。そこで這いつくばれ」<br />「わかった……」<br />　床に膝を着いて、体を横たえる。<br />「腕を背中に当てろ」<br />　言われるがままに背中に両手を差し出すと、ガチャリと金属音がして両手にそれが嵌められた。<br />　手錠が御影の手を縛り付けていた。<br />「く！」<br />　屈辱に耐えて怒りのこもった視線をリーダー格の男に投げつける。<br />　ストッキングをかぶった男の口元に冷笑が浮かぶ。<br />「約束通りだ。お前は席に戻っていいぞ」<br />「は、はひ！」<br />　人質になった男は半ばずり下がった濡れたズボンを上げて、席に戻ろうと背中を向けた。<br />　<br />　その瞬間はスローモーションのように思えた。<br />　背を向けた男にリーダーが銃を向けて、引き金に手をかけた。<br />　機内に響く銃声音、ボス、ボスと音を立てて、男の背中に赤い丸穴が穿たれた。<br />　膝を突いて、男は倒れて動かなくなった。<br />　赤い染みが床を濡らして広がっていく。<br />　<br />「何で撃った！？」<br />　這いつくばったまま御影が叫ぶ。<br />　その頭を男の手が髪ごと掴んで銃口を喉元に突きつけた。<br />　目の前で男の冷たい目と御影の怒りの目が交差する。<br />「奴はもう人質解放だ。俺たちに逆らうないいか？」<br />　唇を強く噛んで、御影は言葉を飲み込んだ。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・人質中<br />御園巴(みそのともえ)・・・・・傍観中<br />犯人・・・・・俺たちは地獄のテロリスト！<br /><hr size="1" />　　　　　　<br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-148.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-150.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-20T02:16:53+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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<title>幕間／未確定記憶 </title>
<description> ここからは若干グロですぉ。でも追記表示しませんからあしからず。　生理現象を処理するために男がトイレの便器に座ったのは深夜の二時だった。　旅客機のトイレはシンプルで狭かった。　ズボンを下ろして、便器に座ったまま唸り声を上げて、男がその大きな手で顔を撫でる。　異様なほど蒼白の顔に茶色の髪をポマードで固めた男の頭身がステンレス製の壁に映っている。　トイレに入ってすぐに何かが乱射されるような音が外から響い
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<![CDATA[ ここからは若干グロですぉ。でも追記表示しませんからあしからず。<br /><hr size="1" /><br />　生理現象を処理するために男がトイレの便器に座ったのは深夜の二時だった。<br />　旅客機のトイレはシンプルで狭かった。<br />　ズボンを下ろして、便器に座ったまま唸り声を上げて、男がその大きな手で顔を撫でる。<br />　異様なほど蒼白の顔に茶色の髪をポマードで固めた男の頭身がステンレス製の壁に映っている。<br /><br /><br />　トイレに入ってすぐに何かが乱射されるような音が外から響いた。<br />　微かに聞き取れる悲鳴、男は顔を上げて耳を澄ます。<br />　静寂に包まれる室内。<br />　周囲を見回す。<br />　何かが変だ。<br />　何かが起こっていた。<br />　だが男は動けない。<br />　またあの痛みが襲ってきたらどうしよう。<br />　また気絶してしまうかもしれない。<br /><br />　<br />　耐え難い腹の痛みに襲われて、便器の前に突っ伏して気絶してしまったのだ。<br />　どれほど時間が過ぎたのか、うっかり時計を席に置いてきてしまったから分からない。<br /><br /><br />　困るんだよ、今も困ってるけど、ああ、何で出ないんだ。<br />　空の上でトラブルなんて困るんだ。<br />　男はぶつぶつと呟いて、腹を擦った。<br />　妙な感触が手に当たっていた。<br />　シャツを捲りあげて、それに触れてみる。<br /><br />　動いていた。<br /><br />　青いゴルフボール大の器官が浮き上がって男の腹の中で動いていた。<br />　これは何だ？<br />　いったい、何が起きてるんだ。<br />　恐る恐るそれに手を触れてみる。<br />　突然、忘れかけていた腹痛が男を襲った。<br />　医者だ。<br />　とにかく医者に見せないと。<br />　昼飯をレストランで食ったあたりから様子がおかしかった。<br />　腹がぐるぐるなってひっくり返りそうな感覚があったんだ。<br />　畜生！　<br />　あんとき医者に行ってればよかった。<br /><br />　だけどそれはできない。<br />　何せ大切な取引があるんだからな。<br />　取引相手は日本人だ。<br />　大金が動くビジネスなのに腹痛なんてついてない。<br />　平気さ落ち着け、ここにも医者の一人くらい乗っているかもしれない。<br />　これはきっと性質の悪い出来物に違いない。<br />　切り取ってやる。<br />　とにかく早く楽になりたいんだ。<br />　男はズボンを履いて、シャツをなおざりに戻してようやく立ち上がると、込み上げてくる苦痛に耐えながらトイレの鍵を開けて出た。　<br /><br />　トイレから出ると、今度はまた銃声が聞こえたが、さっきよりもっと恐ろしい音がした。<br />　おぼつかない足取りで揺れた旅客機の煽りを受けて、男は転びそうになった体を背後の壁に打ち付けて阻止した。<br />　打ち付けた背中が痛い、頭が痛い。<br />　だけどそれはだんだんと心地よいものになっていた。<br />　腹の痛みもまったく気にならない高揚した気分に包まれていた。<br />　ああ…<br />　男は呟いて、だらしなく涎を垂らす口を開けた。<br />　物陰に震える女の影が見えた。<br />　スチュワーデスの制服姿の女が頭を抑えて震えている。<br /><br />「どなひゃぁ？」<br />　どうしたとかけたつもりの声は妙な声になっていた。<br />　その声に女は俯いたまま答えた。<br />「お、お客様、戻っちゃ駄目です！　あっちには銃を持った男たちが…」<br />　女はそう言ってから男の顔をぼんやりと見上げた。<br />　その顔は恐怖を浮かべて何とか冷静に保とうとしていた。<br />「ぁんらぉでのかぉになにかっぃてかぁ」<br />　間延びする自分の声がおかしいなと男は気がつく。<br />「ぁれぇん」<br />　スチュワーデスの女に一歩近づくと女は一歩下がる。<br />　やがて、女は壁際に追い詰められて叫び声を上げて失神した。<br />　倒れた女の襟首を掴み、目を見開かせて、女の白目に映る男の姿を見た。<br />　男の記憶にあるハンサムボーイの顔ではなく、どこかおかしいくらい伸びた首と平べったくなった顔が映っていた。　<br />「んあだりゃ」<br />　男は無意識にタバコを吸おうとシャツを探る。<br />　異様に発達した筋肉に触れる。<br />　今にも着ているシャツを破ろうと内側から圧迫していた。<br /><br />「誰だ！　大人しくしろ！　こっちは銃を持ってるんだ。下手な真似をするな？」<br />　不意に背後から投げかけられる声に男は手を上げた。<br />　その手には掴まれたまま失神している女がぶら下がっている。　<br />「何だ、お前は！　う、動くな」<br />　黒いストッキングをかぶった男が銃を向けた。<br />　俺にはわかった……<br />　震えた体と声、こいつは恐怖を感じている？<br />「ぁぅこれしゃません」　<br />　手に持った女を男に押し付けるつもりで放り投げた。<br /><br />　女の首がもげるほどのパワーとスピードでそれは投擲されて、銃を持った男に叩きつけられた。<br /><br />　ぐしゃり…<br />　<br />　力を失った男の手から銃が落ちて、遅れて濃厚な血がひたひたと倒れた男の腰を濡らす。<br />　頭を半ば失ったスチュワーデスがごとりとマネキンのように転がる。<br /><br />　壁に飛び散った二つの赤い華を見て男は綺麗だなと思った。<br /><hr size="1" />　<br /><strong>登場人物</strong><br />男・・・・・変なものに取り付かれている<br />スッチー・・・・・被害者<br />犯人Ａ・・・・・被害者<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-146.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-149.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-19T08:09:29+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　途中で乗換えをしてから、深夜まで眠るまいと頑張っていたのも空しく、いつの間にか、御影は眠り込んでしまっていた。　照明が薄く落とされた機内の席で、ぼんやりした頭で目を覚ます。　かけられた毛布の温かみと、隣で眠る人の定期的な呼吸音を聴いていた。　母様……　ずっと、ずっと昔の記憶。　御影がむずかって、泣きつかれたとき、いつも隣に母様が添い寝して子守唄を唄ってくれた。　今では曖昧となってしまった母様の顔は
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<![CDATA[ 　途中で乗換えをしてから、深夜まで眠るまいと頑張っていたのも空しく、いつの間にか、御影は眠り込んでしまっていた。<br />　照明が薄く落とされた機内の席で、ぼんやりした頭で目を覚ます。<br />　かけられた毛布の温かみと、隣で眠る人の定期的な呼吸音を聴いていた。<br /><br /><br />　母様……<br />　ずっと、ずっと昔の記憶。<br />　御影がむずかって、泣きつかれたとき、いつも隣に母様が添い寝して子守唄を唄ってくれた。<br />　今では曖昧となってしまった母様の顔はぼやけている。<br />　父様の顔は何故か思い出せなかった。<br />　それは仕方ないことだった。<br />　父様はいつも工房に入り浸っていて、御影が工房に近づくことを禁止していたからだ。<br />　それでも、父様は御影の誕生日に人形を作ってくれたことは覚えていた。<br />　その人形が父様の遺品となってしまったのだけれど……<br />　<br /><br />　思い出を振り払って、時計を探す。<br />　ポケットの中のデジタル式の腕時計が緑の文字で朝の三時を示していた。<br />　到着まで六時間を残していると計算する。<br />　もうすぐ日本に帰国する。<br />　気を抜いて寝てしまったのは僥倖だった。　<br />　それにしても……<br />　何故、こんなに寒いのか？<br />　機内は暖房が効いているが、窓の外から漂ってくるような冷気に当てられたせいか、指先まで強張っていた。<br />　窓の外を見るが、暗い雲が機体を包んでいて外の様子を窺い知ることはできなかった。<br />　御影は目覚めたばかりの感覚を研ぎ澄まして探査を始めた。<br /><br /><br />　ごぼり。<br />　何かが蠢く。<br />　暗い、暗い闇の世界から、その触手を伸ばす。<br />　それは、とても、とても巨大で、この旅客機を丸ごと覆って包み込もうとしていた。　　<br /><br />　何？<br />　今のイメージは何？<br /><br />　背筋に走る悪寒、ただならぬ気配を感じ取って御影の全身を突き抜けた。<br />　機内の様子に目を走らせる。<br />　この程度の暗闇など、今の御影には何の障害にもならない。<br />　多くの乗客が皆同じように毛布に身を包んで休憩を取っている。<br />　穏やかだ。<br />　その穏やかさが異様だった。<br />　先程のイメージが頭から離れない。<br />　あれは幻？<br /><br />　そのとき、機内に変化が起こった。<br />　白い靄が目の前を通り過ぎて、乗客の頬を撫でた。<br />　寝ていた男がびっくりした顔で目を覚まして見回すが何も見えていないようだった。<br />　続いて、黒くて丸い、人の形をした何かが天井を駆け回っていた。<br />　それらはクスクスと笑って人間たちを見下ろしていた。<br /><br />　何が起きた？<br />　御影にしか見えない霊魂がこんなにも多くここに存在するはずがないのだ。<br />　もう一度窓の外を見て、感覚の目を研ぎ澄ませるとそれは見えた。<br />　緑色の雲海の中を旅客機は飛んでいた。<br />　雷の光が雲海の所々で光を投げかけている。<br />　黒い月が天空の果てに在るのを見た。<br />「嘘……」<br />　感覚の目は真実のみを映し出す。<br />　この冷気は魂を侵食する魔物の触手そのもの。<br />「黄泉……」<br />　そう呟いて、御影は旅客機が魔界の入り口を飛んでいるのだと悟ったのだ。<br />「う…　ん…」<br />　隣の巴が軽く寝返りを打つ。<br />　肩からずれた毛布を御影が直すと、突然大声が響いた。<br /><br />「さあ！　皆、起きやがれ！」<br />　銃声……<br />　否、それは空砲だが、その連射音が機内に木霊して、寝ていた乗客たちが叫び声を上げてパニックに陥っていた。<br />「黙れ！　座れ！」　<br />　英語で叫んでいた男が近くにいた男にの頭に銃を突きつけると、やっと事態を理解した乗客たちは慌てて席に座った。<br />「何？！　何が起きたの？」<br />　御影は動揺せずに起き上がろうとした巴の体を隠すように自分の方に抱き寄せた。<br />「お静かに！」<br />「は、はい…」<br />　大人しくなった巴の体を抱き寄せたまま、鋼の座る席を伺うと、御影の視線に気がついたのか、鋼が頷いて応えた。<br />　鋼様は大丈夫、とても冷静なようだ。<br />　この旅客機が置かれている状況にハイジャック犯？<br />　御影は混乱した頭の思考を落ち着かせるなければならなかった。<br />　どう打って出るべきなのか？<br /><br />　犯人は一人ではなかった。<br />　空砲を放った後に黒いストッキングを頭からすっぽりかぶった屈強な男たちが五人現れ、それぞれの手には散弾銃、腰に予備の拳銃もぶら下げて、通路の端と端を押さえていた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・任務中<br />御園巴(みそのともえ)・・・・・鋼の妻<br />御園鋼(みそのはがね)・・・・・巴の夫<br />ハイジャッカー・・・・・その銃、どやってもちこんだのよ？　<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-145.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-148.html" title="続きを読む">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-18T04:48:14+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　旅客機が空港を飛び立つ。　その飛び立つ瞬間までの振動を背中に感じながら、御影はほっと一息つく。　どこから襲ってくるのか分からないものに神経を研ぎ澄ませていられるのも限度がある。　ましてや、鬼の感覚を発現させていれば、その消耗は並みのものではない。　人の感覚に切り替えると、機内は無音から雑然とした音の世界に戻った。　御影が感じ取ろうとしていたのは妖が放つ気配と音だった。　外部の人や機械がたてる音を
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<![CDATA[ 　旅客機が空港を飛び立つ。<br />　その飛び立つ瞬間までの振動を背中に感じながら、御影はほっと一息つく。<br />　どこから襲ってくるのか分からないものに神経を研ぎ澄ませていられるのも限度がある。<br />　ましてや、鬼の感覚を発現させていれば、その消耗は並みのものではない。<br /><br />　人の感覚に切り替えると、機内は無音から雑然とした音の世界に戻った。<br /><br />　御影が感じ取ろうとしていたのは<strong>妖</strong>が放つ気配と音だった。<br />　外部の人や機械がたてる音を遮断し、耳の中に無音の世界を作り出す。<br />　<strong>妖</strong>は独特の周波のような波を持っていて、絶えずその音をたて続けている。<br />　その気配を感じ取れないか試していたのだ。<br />　欠点は、誰かにその途中に話しかけられても気がつかないことだった。<br /><br />「――ちゃん？」<br />　目を開いて、少し困った顔の巴と目が合った。<br />　旅客機はすでに雲の上にいて自由に歩き回れた。<br />「なにかありましたか？」<br />「いいえ、寝ていたのかな？」<br />「えと…　はい。少し疲れていたので」<br />　嘘をついた。<br />　説明しても意味がない。<br />　不安にさせるのは護衛失格だと思ったのだ。<br />「そうね、ごめんなさいね。日本からこっち、すぐに私たちととんぼ返りですもの」<br />「御園の鬼はそれくらいはへっちゃらです」<br />「頼もしいのね♪」<br />　と、隣に座った巴が御影を抱きしめる。<br />　ビジネスマン風の男が二人を見ていて少し恥ずかしかった。<br />「あわわ」<br />「ふふ、照れた顔も可愛いわ♪」<br />　軽く御影の頬を指で突いて巴ははしゃいでいる。<br />　とても御影と同じ歳の子どもを持つ母親の姿には見えない。<br /><br />　巴は御影がイメージしていた女性とはかなり違った。<br />　どこなく、その風貌は鼎伯母様と似ているが性格はまるで違う。<br />　似ているのは姉妹なのだから当然なのだけど、もっとほんわりしていて、儚くて少女のようだった。<br />　会う前にイメージしていたのは、芯が強くて怜悧で聡明な女性だった。<br />　そう、鼎伯母様に近いイメージを持っていたけれど、今は当てが外れてよかったと思っていた。<br />　まるで、まるで…<br />　母様のような包容力を持った素敵な女性だった。　　<br /><br />「御影ちゃんの御家族は今どちらなの？」<br />「鬼に家族はありません」<br />「あ……」<br />　哀しげな表情を浮かべて巴は黙ってしまう。<br />　その顔にしてしまったのが自分の言葉だと気がついて、御影は俯いたまま何も言えなくなってしまった。<br /><br /><br />　鬼に家族はいない。<br />　鬼として育てられる者の血縁関係は一切白紙に戻される。<br />　戸籍を書き換えられ、すでにいなくなった存在になるのだ。<br />　親を失い、行く当てのない子どもを鬼として養育する機関が御園には存在する。<br />　そして鬼の名前を名乗るようになるのだ。<br />　望めば、自らの家族の記憶を消去することも可能だった。<br />　多くの鬼がそうして、俗世のしがらみを捨てて御園に仕える鬼になるのだ。<br />　その中で、御影の事情は線を逸していたが、御影も御園の血を引いているのだ。<br />　その証が御影という名前に込められていた。<br /><br />「いつ、如何なるときも御園の影を守る鬼とならん」<br />　<br />　名前を戴いたときの誓約は今も胸に刻まれている。<br /><br /><br />　窓から見える雲は夕日で一面どこまでも朱色に染まっていた。<br /><br />　夜が来る――<br /><br />　<strong>妖</strong>どもが目を覚ます宵のときが訪れる。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・任務中<br />御園巴(みそのともえ)・・・・・護衛対象<br /><hr size="1" />　<br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-145.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-146.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-17T02:12:46+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　レストランの席についてから御影は落ち着かなかった。　御影の動作一つ一つに巴の視線が追ってくるようで、何だかやりにくい。　目と目が合うと巴は微笑んで、その表情がとても素敵で、思わず任務だということを忘れそうになる。　身の置き場に困って身を縮こまらせていると、巴が思い出したように質問してきた。「御影ちゃんは高校はどこなの？」　すでにペースは完全に巴に握られていた。　呼びかけもちゃんになっていたが、そ
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<![CDATA[ 　レストランの席についてから御影は落ち着かなかった。<br />　御影の動作一つ一つに巴の視線が追ってくるようで、何だかやりにくい。<br />　目と目が合うと巴は微笑んで、その表情がとても素敵で、思わず任務だということを忘れそうになる。<br />　身の置き場に困って身を縮こまらせていると、巴が思い出したように質問してきた。<br />「御影ちゃんは高校はどこなの？」<br />　すでにペースは完全に巴に握られていた。<br />　呼びかけもちゃんになっていたが、そんなことは差して気にならなかった。<br />「<strong>城清学院</strong>です」<br />「それはすごいね。円も城清なんだよ」<br />　横から鋼が得意げな顔で口を挟む。<br />「私は<strong>普通科</strong>ですから」<br />　御影は謙遜して答える。<br /><br />　受験は鬼の修行よりも苦しいと思った人生最大の難関だったことを思い出す。<br />　まさにあれは地獄のようだった。<br />　よく入学できたものだ。<br />　それというのも……<br />　<strong>セツナ</strong>が、「俺は<strong>城清学院</strong>を目指す！　目指すはただ一本！」と宣言したのがきっかけだった。<br />　鬼も怯む受験戦争、そこに無謀にも那雲市最大の難関高校である<strong>城清学院</strong>を指名するなど狂気の沙汰であった。<br />　修行も一時中断し、受験のために全身全霊をかけて猛勉強を重ねたのだ。<br />　御影も<strong>城清学院</strong>一本に絞ってしまったので、後に引くことは許されなかった。<br />　それというのも、蛮師匠が、「男なら一本道あるのみ」とわからないことを言って、他の志望校の願書を捨ててしまったからである。<br /><br />「それでも、競争率高いのよね」<br />「ええ、制服が可愛いし、女の子の憧れですから」<br />　それだけが唯一のモチベーションだったのだ。<br />「うん、私も制服着てみたかったな。でも、私があの歳のときは<strong>城清学院</strong>はなかったのよね。残念だわ」<br />「でも、円の制服を着て喜んでたじゃないか。娘に雷落とされただろう？」<br />「あら、あなただって可愛いって言ったじゃありませんか」<br />　娘のように頬を膨らませて巴がチャーミングに笑う。<br />「そうだけどね」<br />　苦笑した鋼が困ったように御影を見た。<br />　城清の制服を着た巴の姿は容易に御影の頭の中に再現できて、笑っていいのかよくわからない。<br />　　<br />　レストランの店内は暗めの照明がそれぞれのテーブルを淡く照らし出していて、バックミュージックのジャズが雰囲気を盛り上げている。<br />　ますます、御影は二人に申し訳ない気になる。<br />　二人水入らずの食事を邪魔してしまったのかもしれない。<br />　<br />　だが……<br /><br />　ふと、視線を感じた。<br />　まとわりつくような感じが胸の奥でざわざわと嫌な感じに変わる。<br />　<strong>妖</strong>の気配ではない。<br />　人間の視線に間違いなかったが、その探るような気配は店内の人の立てる雑音に紛れて位置は掴めない。<br />　ボーイがやってきて注文の品をカートからテーブルに並べていく。<br />「美味しそうね。御影ちゃんも遠慮しないで、ね？」<br />「はい。あの、頂きます」<br />　気もそぞろにフォークとナイフを手にとってサラダから手をつける。<br />　まとわりついていた気配が消える。<br />　店内から入り口に視線を向けて様子を伺うと、親子連れとビジネスマンが支払いに向かう姿が見えた。<br />　あれは気のせいだったのかもしれない。<br />　そして、目の前の皿の上の肉を切り分ける作業に取り掛かった。<br />　またこれから長いフライトが待っている。<br />　少しでも食べて体力を温存しておかなければならないのだ。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・任務中<br />御園巴(みそのともえ)・・・・・鋼の妻<br />御園鋼(みそのはがね)・・・・・巴の夫<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-142.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-145.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-16T06:34:50+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>とある「蛇姫†夢想～ドキッ鬼さんだらけのアヤカシ退治～」＠にゃ～</title>
<description> 　毎度お馴染み管理人の節です。　御影の話を書くと宣言していたので書いてみたらいきなり脱線してね？　　みたいな雰囲気から始まったのだけど、まああれは過ぎちまった過去って事で……　御影の母と鼎の登場、しかし母死亡！　いきなり登場して殺害！　まじパネェっす（自分で言ってみる）。　御影の記憶が改竄されたのはまあ妥当な処置だったと思えるかな。　じゃなきゃ、御園の秘密を知った部外者って事で口封じされちゃったかも
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<![CDATA[ <center><a href="http://blog-imgs-12-origin.fc2.com/e/p/h/ephemerall/20061219001527.jpg" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-12-origin.fc2.com/e/p/h/ephemerall/20061219001527.jpg" alt="" border="0" width="450" height="338" /></a></center><br /><br />　毎度お馴染み管理人の節です。<br /><br />　御影の話を書くと宣言していたので書いてみたらいきなり脱線してね？　<br />　みたいな雰囲気から始まったのだけど、まああれは過ぎちまった過去って事で……<br />　御影の母と鼎の登場、しかし母死亡！　いきなり登場して殺害！　まじパネェっす（自分で言ってみる）。<br />　御影の記憶が改竄されたのはまあ妥当な処置だったと思えるかな。<br />　じゃなきゃ、御園の秘密を知った部外者って事で口封じされちゃったかもしれないと言ってみる。<br /><br />　この後の展開は…<br />　飛行機、円の両親、日本帰国、どかーんてそのままもろばれである＾＾ｖ<br />　ｏｐで語るには紙面が足りないのである。<br />　そんなシーンが多いので、後から回想という形で語るしかない。<br /><br />「なんで人を殺してしまうノン（ｂｙ節子）」　<br /><br />　運命である。<br />　殺すのは前もって死んだという伏線が出てる人たちだけであります。<br />　もしくは<strong>死亡フラグ</strong>立てちゃった人とかくらい（まだ立てられてないけど）。<br />　<br /><blockquote><p><br />blogram成分抜粋。なんぞこれ<br /><br />「この世の果ての、さらに向こうに」には、節さんの家族　着物　剣道　神社　出会い　いろいろな事が綴られています。<br />キーワードは「両親」「着物」「剣道」です。<br /><br /><br />最近は、音楽にも関心が向いているようです。<br />なんとなく「敬う気持ち」「カワイイという気持ち」気分ですね。<br /></p></blockquote><br /><hr size="1" /><br /><center>チラシの裏</center><br /><br /><br />　鬼の力には術に近い<strong>鬼道</strong>の技と<strong>神通力</strong>の二種類が存在していて、<strong>妖</strong>の存在を感じ取ったり、<strong>心話</strong>を行ったり、<strong>記憶操作</strong>したり、<strong>物質変換</strong>できるのが<strong>神通力</strong>に分類されていて、鬼だからと言ってこの力総てを使えるわけでもなく、人によってはまったく使えなかったり、不得手だったりする。<br />　御影が呼び出した霊剣も<strong>物質変換</strong>によって、現実に<strong>投影</strong>された<strong>フツノミタマ</strong>のレプリカである。　<br /><br />　<strong>神通力</strong>は、基本的に心の力に左右されるので、調子のよいときや悪いとき、体調などで能力が左右される不安定な能力としてあり、鬼をその身に降ろしたものだけが使うことができる。<br />　<strong>鬼道</strong>の術は鬼を降ろした人間以外でも使用できる技の一つで、陰陽道の影の部分みたいなもん？（オカルトはしらね）<br />　<strong>神道</strong>の祓う、禊というのに対して、<strong>鬼道</strong>は霊を呼び込む、憑かせる方面の技で、強い精神と技術を持っていないと逆に霊に操られてしまう。<br />　すでに強力な霊である鬼を憑かせた鬼自身は<strong>鬼道</strong>で呼び込んだ霊程度は造作もなく抑えることができる。<br /><br />　また<strong>使鬼</strong>という霊を憑かせた小型の人形を鬼たちは使いこなす。<br />　<strong>水鏡盤</strong>という筒状の螺旋盤にその人形は収容されていて、水を動力に針を動かすことで使役する。<br />　真衣が<strong>水鏡盤</strong>を操り、<strong>妖</strong>の位置を特定して力を推し量っていたように、<strong>使鬼</strong>は鬼の目となり、耳となって手助けをしてくれる貴重な存在だ。<br /><br /><br /><br /><br />　次回は「御園家に隠された埋蔵スモークチーズ伝説！」の巻<br /><br /><br />お楽しみに！ ]]>
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<dc:subject>編集後記</dc:subject>
<dc:date>2009-11-16T05:49:48+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> ―春―　ロンドン・ヒースロー空港に降り立って、初めて踏んだ異国を実感する間もないまま、私は目的の人物二人を探し始めた。　指定されたラウンジに向かい、ビジネスクラスの利用券を提示する。　私の拙い英語でも何とか通じるのか、丁寧な案内員があちらですと指差した方に向かう。　身なりを整えようと、ガラスに映った自分の姿をチェックする。　黒いリクルートスーツ、髪を後ろで結んでふわりと揺れる髪、格好の割にはまだあど
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<![CDATA[ <center>―春―</center><br /><br /><br />　ロンドン・ヒースロー空港に降り立って、初めて踏んだ異国を実感する間もないまま、私は目的の人物二人を探し始めた。<br />　指定されたラウンジに向かい、ビジネスクラスの利用券を提示する。<br />　私の拙い英語でも何とか通じるのか、丁寧な案内員があちらですと指差した方に向かう。<br /><br />　身なりを整えようと、ガラスに映った自分の姿をチェックする。<br />　黒いリクルートスーツ、髪を後ろで結んでふわりと揺れる髪、格好の割にはまだあどけない表情の少女。<br />　御影は緊張した心を解き解そうと深呼吸する。<br />　大丈夫、初めての任務だけど私はうまくやれる。<br />　護衛の対象はこのラウンジのどこかにいるはずだった。<br />　目的の人物二人はすぐに見つかった。<br />　窓際のソファで歓談している夫婦がそうだと気がつく。<br />　すぐに気がついたのは、すでに御影は二人の顔を知っていたからだ。<br />「失礼します。御園様でいらっしゃいますね」<br />　慣れない敬語で話しかける。<br />　二人はお互いの顔を見てから私に視線を向けた。<br />「鋼様、巴様。御園本家から参りました。愛染御影と申します」<br /><br />「あなたがそうなのね」<br />　柔らかい声で巴が安堵したように言った。<br />「はい」<br />「もっと年配の方が来るのかと思っていたわ」<br />「申し訳ありません。若輩者ですが、一生懸命務めさせてください」<br />「あ、いや、君のような若い子が来てくれて正直ほっとしてるんだよ」<br />　隣の鋼がフォローするように巴の肩に手を置く。<br />「そうなの、あなたみたいに可愛い子が来てくれるなんて嬉しいわ」<br />「は、はぁ…」<br />　予想外の反応に御影は戸惑う。<br />　鬼として育てられて、素直に可愛いという表現で話しかけられることは仲間内や鬼の間では皆無だったから、その言葉は心にくすぐったかった。<br />「おいくつ？」<br />「１６になります」<br />「本当に若いのね。うちの円と一緒だわ」<br />「円よりしっかりしてるなぁ。見習わせたいよ」<br />　二人が笑う。<br />　暖かい…<br />　この二人と一緒にいるだけで御影の胸に暖かいものが込み上げてきて、何故か懐かしくて…<br /><br />「大丈夫？」<br />　覗き込んだ巴の顔が目の前にあって、ハンカチで目元の涙を拭われる。<br />　いつの間に涙なんて…<br />　私は少し、今日はおかしいのかもしれない。<br />「愛染御影さん、だったね」<br />　鋼の問いかけに「はい」と答える。<br />「いや、もしかしてと思ったんだけど、深いと書いて、影と書いてミカゲと読むのかと思ったんだけど」<br />　ドキリとした。<br />　何故、そのことを知っているのだろう？<br />　私とこの夫婦は実際に顔を合わせたのは今日が初めてのはずなのに。<br />「いえ、御の字に影でミカゲです」<br />「そうか、昔の…　知人の娘さんが深影さんと言ってね。今はどうしているんだろう」<br />「あなた…」<br />　勘違いと知って、どこか沈んだ顔をした鋼の手に巴が手を重ねる。<br /><br />　この人たちは私のことを知っている？<br />　胸がドキドキする。<br />　母様のことをこの二人は知っている？<br />　いっそ、聞いてしまいたい衝動に駆られる。<br />　だけど、私は使命を思い出して留まった。<br />　今の私は鬼として、御園家を守る任務についているのだ。<br />　私情を挟むことは禁じられている。<br /><br />「御影さん、お腹空いてない？」<br />　巴の言葉に私は朝と昼を抜いていることを思い出す。<br />「いえ、その平気です」<br />「私たちはこれから昼食にするんだが、御影さんも一緒にどうかな？」<br />「あ…　でも…」<br />　これも任務だ。<br />「わかりました。ご一緒させてください」<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・今年高校生<br />御園巴(みそのともえ)・・・・・鋼の妻<br />御園鋼(みそのはがね)・・・・・巴の夫<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-141.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-144.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-15T14:45:30+09:00</dc:date>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 「母様はいつ戻ってくるの？」　かつて、無邪気に戻ると信じていた頃の私――　　あの日、何が起こったのかを幼い私に教えてくれたのは鼎伯母様だった。　ひどい事件だったという。　夜陰に乗じて犯人が放った火は実家の全棟を消失させ、寝ていた父は焼死し、母は私を助けてから程なくして亡くなってしまったらしい。　一ヶ月……　その間、ずっと意識不明のまま目覚めたとき、私には何一つ残っていなかった。　実家のあった焼け焦げた
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<![CDATA[ 「母様はいつ戻ってくるの？」<br /><br />　かつて、無邪気に戻ると信じていた頃の私――<br />　<br />　あの日、何が起こったのかを幼い私に教えてくれたのは鼎伯母様だった。<br />　ひどい事件だったという。<br />　夜陰に乗じて犯人が放った火は実家の全棟を消失させ、寝ていた父は焼死し、母は私を助けてから程なくして亡くなってしまったらしい。<br />　一ヶ月……<br />　その間、ずっと意識不明のまま目覚めたとき、私には何一つ残っていなかった。<br />　実家のあった焼け焦げた家の跡をさまよいながら、何度、父と母の姿を探したことだろう。<br />　その頃の私は、周囲から見てとても痛々しい存在だったという。<br /><br />「今日からあなたは深影の名を捨てなさい。これからは御影と名乗るのです」<br /><br />　鼎伯母様の言うままに、空儀の姓を捨て、両親がつけてくれた名前を失って、私は愛染御影という名前になった。<br />　それからの数年を鼎伯母様の元で養育してもらいながら、私は鬼としての修行を始めたんだ。<br />　私に流れる血は呪われた血、それを抑えて制御するのに鬼の力を使いこなせるようにならないといけないと教わった。<br />　そうすることが、母代わりに育ててくれた鼎伯母様への唯一の恩返しだった。<br />　鼎伯母様は厳しい人だったけれど、私にとってこの人がいなければ生きていけなかったし、それに母の名前と感じが似ていたから、だから、この人をもう一人の母様だと思って頑張れたんだ。<br /><br />　鬼の修行はとても、とても辛かった。<br />　怖いけど、とても強い蛮師匠、兄弟子の兜矢兄さん、姉弟子の真衣姉さん。<br />　御園のお屋敷に住んでたとき友達になった明日那。<br />　<br />　それとね、一人の男の子に会ったんだ。<br />　勢田綱儀――　<br />　初めて会ったのに私にはわかったんだ。<br />　その子は<strong>セツナ</strong>だって。<br />　理由なんかわからない、ただそう思ったんだ。<br />　学校というものに通うようになって、<strong>セツナ</strong>と明日那がいつも近くにいて、その頃が一番幸せだった。<br /><br /><br />　八の歳を数えた頃、私は鼎伯母さまに連れられて、御園家が奉る神社の新年の催し物にこっそりと参加した。<br />　その集いに初めて参加するという親子の姿を牛車の簾の中から見せられて、あの方たちがお前が守るべき人たちなのだと教えられた。<br />　綺麗な女の人と、優しそうな旦那さん、大人びたお姉さん、それに私と同じくらいの女の子だった。<br />　私、大きくなったら立派な鬼になって、あの人たちを守れる力を手に入れるんだって誓いをしたのがあの日だった。<br />　<br />　<br />　それから時は流れた――　<br /><br /><br />　霊山にある鬼の里は人の住む世界とはかけ離れた環境にある。<br />　電気も水道もテレビもない。<br />　携帯も繋がらない、まさに秘境。<br />　鬼の修行を積んだものだけが出入りを許される滝から、里に入ることを許されるのだ。<br />　そんな人里の摂理からかけ離れた里も今日はどことなくざわついていた。<br /><br />　神子様が身罷られた――　<br /><br />　そんな噂がまことしやかに伝わり、鬼見習いの子どもまでその話は伝聞していた。<br /><br />　密やかに長の所へ参れ――<br /><br />　今朝一番に<strong>カラス伝聞</strong>の声を聞き取って、御影は秘密の入り口から<strong>影脚</strong>で洞窟の天井を伝って走る。<br />　何事だろう？<br />　鬼見習いである御影が呼び出されるなんて余程のことだった。<br />　心当たりはなかった。<br />　<strong>カラス天狗</strong>の見張りに合言葉を告げて長のいる洞窟まで駆けた。<br /><br />「御影、参りました」<br />「来たか……　御影よ、今年でいくつだ」<br />「１６…　です」<br />「お前は鬼として多くを学んだな？」<br />「はい」<br />「今日をもってお前を鬼として解き放つ。最初の任務を与える」　<br /><br />　緊張に御影は意識を昂らせた。<br />　ようやく、私は一人前の鬼になれるんだ。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・今年高校生<br />長・・・・・鬼の里の長<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-137.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-142.html" title="続きを読む">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-15T06:41:19+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　かはっと息を吐き出して、口をぱくぱくと陸に上がった魚のように喘いでいた幼子は、女の手の中でぐったりと力を失った。　我に返る女の瞳に蒼ざめて気を失った幼子が映り、震えながら、首にかけていた指を離した。「わらわは…　一体？」　殺意と欲望の衝動が再び襲って、女はその白い髪をかきむしる。「ふぅ…　ああ…」　木の葉の影から差し込む光が眩しく視界を曇らせる。　幼子の首元の喉笛に喰らいつき、血を貪り飲みつくした
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<![CDATA[ 　かはっと息を吐き出して、口をぱくぱくと陸に上がった魚のように喘いでいた幼子は、女の手の中でぐったりと力を失った。<br />　我に返る女の瞳に蒼ざめて気を失った幼子が映り、震えながら、首にかけていた指を離した。<br />「わらわは…　一体？」<br />　殺意と欲望の衝動が再び襲って、女はその白い髪をかきむしる。<br />「ふぅ…　ああ…」<br />　木の葉の影から差し込む光が眩しく視界を曇らせる。<br />　幼子の首元の喉笛に喰らいつき、血を貪り飲みつくしたい。<br />　女が再び顔を上げたとき、その顔はまるで獣のような顔に変わっていた。<br /><br /><br />　まとった<strong>鬼気</strong>に周囲の空気まで淀んだかのようだった――<br /><br /><br />「<strong>影縛</strong>！」<br />　気迫の篭った叫びが木霊して、空間を引き裂いて飛来した針が女の影を縫いとめる。<br />　それと同時に女の動きが止まった。<br />　だが、見よ……<br />　<strong>鬼気</strong>に触れたその針が侵食されて腐敗して崩れ始めた。<br />　大樹の幹に影が飛び込んで、木の枝にもたれかかった幼子を抱いて跳び退って、針を投擲した人物の隣に立った。<br />「磯村！」<br />　幼子を抱えた細身の男に白いスーツの女が呼びかける。<br />　磯村と呼ばれた男が素早く幼子の息を確かめる。<br />「要様、すぐに手当てをしなければ……」<br />「お前は行け！　この場は私が食い止めよう。すぐに鬼がこよう」<br />　要の言葉に磯村は「承知」と踵を返して走り出す。<br /><br />　それを追うかのように鬼の姫が跳ぶ。<br />　そこに要の投げた針が飛んで、着物ごと背後の木の幹に張り付ける形で縫いとめられる。<br /><br />　ただの針ではない――　<br /><br />　要は屈んでハイヒールを脱いで放り捨てる。<br />「目を離していたのは母の落ち度……　深影、許して」<br />　歯軋りして、目の前の<strong>化け物</strong>を要は睨みつけた。<br />「血の目覚めは宿命とはいえ、己の孫すら手にかけようとなさるか母上殿。いや、もう御自分の意思も飲み込まれましたか！」<br />　要が叫んで、針を投げた瞬間、それは針の呪縛から逃れて、低い姿勢で落ち葉を散らして駆け抜ける。<br />　鬼の姫の爪が凶悪な黒に染まって、要に向かって繰り出されてそれは伸びた。<br />「な！」<br />　次の針を手に用意していた要は不意を討たれた形で術が遅れた。<br />　血飛沫が舞う。<br />　枯葉が零れ落ちた深紅の赤に染まって、爪に貫かれた体がどさりと音を立てて倒れた。<br />　白いスーツも赤く、赤く、傷口から溢れた血で滲んでいく。<br />「深影……」<br />　要が手を伸ばした先は、娘を連れて逃げた男が行った道の果てだった。<br />　落ち葉を踏みしめて、紫の衣をまとった鬼の姫が近くに立った。<br />　憎しみを込めてその姿を見上げた要が最後に見たものは、禍々しいその爪を差し出した白銀の悪魔だった。<br />　<br />　爪が伸びて、要の喉笛を貫き、迸った血をその身に受け止めて、鬼の姫は嗤った。<br />　片手で頬に滴る血を舐める。<br />「ああ…」<br />　歓喜の声が漏れて、もう動かぬ要の体を何度も何度も貫いた。<br />　血を浴びて、それはまた妖艶な声を上げてころころと嗤った。<br /><br />　　　　　　<br />　風が止んだ。<br />　空気が淀んで、竹林の中に鬼の面が浮かんでいるように見えた。<br />　<strong>鬼気</strong>をまとい、鬼面をかぶったいくつもの影が鬼の姫の周囲を取り囲んでいた<br />　鬼の姫の紫から紅に変わった目が、新たな獲物の登場に歓喜して歪んで、まるで生きているかのように銀色の髪が泳いで揺れた。<br />「かかれ！」<br />　その叫びと同時に林の闇の中から黒い服の男たちが躍り出て、鬼の姫に打ちかかった。<br /><br />　戦いの果てに鬼が何人も打ち倒され、徐々に鬼の姫の力を奪って衰弱させると、力を失った姫はやがて倒れ伏して戦いは終わった。<br />　全身に傷を負いながらも、生き残った鬼の一人が白いスーツを赤く染めた女の死体に取りすがって泣いていた。<br /><br />　鬼がないていた。<br /><br />　それを見つめる鬼たちは一様に何も語らず、ただ黙って哀悼を捧げた。<br />　雨が降りしきっていた。<br /><br /><center>シーンの切り替え</center><br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />磯村(いそむら)・・・・・忍者っぽい使用人<br />要(かなめ)・・・・・深影の母。いきなりシボンヌ<br />深影(みかげ)・・・・・ょぅじょ<br />姫様・・・・・殺意に目覚めてこの人ノリノリである<br />鬼面・・・・・鬼さん<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-136.html">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-141.html">次に進む</a><br /> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-15T05:12:50+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　記憶の中の少女はいつも幼い姿で待ち続けている。　幼子と言ってもよい少女が庭園の池の淵で鯉が泳ぐ姿を見つめながら、手に持った細い枝で水を叩く。　水面に映る小袖姿の幼子の姿が揺れた。　ピチャリと水面に波紋が広がって、魚の影が緑を映す水中に溶け込むように逃げていく。「あ…」　声を上げてつまらなそうに水の表面を枝でかき回した。　「何をしているのだ？」　不意に投げかけられた問い。　幼子はその声の主を見上げ
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<![CDATA[ 　記憶の中の少女はいつも幼い姿で待ち続けている。<br /><br />　幼子と言ってもよい少女が庭園の池の淵で鯉が泳ぐ姿を見つめながら、手に持った細い枝で水を叩く。<br />　水面に映る小袖姿の幼子の姿が揺れた。<br />　ピチャリと水面に波紋が広がって、魚の影が緑を映す水中に溶け込むように逃げていく。<br />「あ…」<br />　声を上げてつまらなそうに水の表面を枝でかき回した。<br />　<br />「何をしているのだ？」<br />　不意に投げかけられた問い。<br />　幼子はその声の主を見上げて嘆息した。<br />　どこまでも白く銀色に輝く髪は腰まで伸びていて、よく手入れされているのであろう、滑らかなその髪は女の動きに合わせてさらさらと流れる。<br />　細かい花の紋様が描かれた紫の羽織に白い着物姿で庭に立つ姿は、まるで一枚の絵のようだった。<br /><br />　幼子が魅入られたのはその紫色の瞳だった。<br />　とても綺麗で、まるで宝石のよう。<br />　その眼に見つめられて、慌てて幼子は目を逸らした。<br /><br />「母様を待っているの……」<br />「そうか、わらわがいては邪魔かの？」<br />「ううん」<br />「おお、ならば、わらわの話し相手になっておくれ。ここはまともに話せるものがおらん」<br />　女はにっこりと笑って、幼子の横、丸い石の上に腰を下ろした。<br />　水面に紫の羽織をまとった女と幼子の姿が鏡のように映し出される。<br />「ここは退屈でたまらん」<br />　眼を細めて池の向こうの庵を眺めていた女が呟く。<br />「お外に出たいの？」<br />「そうさな、いつも見張りがいての。それにここは広すぎる。前にも抜け出したが、すぐに捕まってしまう。お主、名はなんという？」<br />「深影」<br />「ミカゲか美しい名じゃ。わらわは名前がない。気がついたときにはここにいて、何故かここからは出られぬようじゃ。檻というものがあるが、ここはそれに似て窮屈じゃ」<br />　女から滲み出る無念の言葉は深影の心を動かした。<br />「ここから抜け出そうよ」<br />「ほう」<br />　と、女は笑って深影の髪を撫でる。<br />「面白そうじゃの」<br /><br />　そのとき、遠くから声が響く。<br />「姫様？　どちらでございますか。お薬の時間でございます。どうかお戻りください」<br /><br />「うるさいのがきたようじゃ。わらわはお主の遊びに付き合おうぞ」<br />　女は身を屈めて伺うように声のした方を見ると、どこか悪戯っ気のある表情で口端に笑みを浮かべる。<br />「こっち」<br />　深影は羽織の袖を引っ張って、林の中の小さな道を歩き出す。<br />　女は慣れぬ道に戸惑いながら、少女の手を握ったままついてくる。<br />　その様はどちらが大人なのかわからない。<br />「抜け道があるのか」<br />「うん」<br /><br />　竹林が風にざわめく。　　<br />　足元の落ち葉を踏みしめながら傾斜を歩いて、生垣に沿って歩く。<br />　先程いた庭園の池を望んで、その向こうには紅葉した木々が見えた。<br />「見てみよ、美しいが、わらわは少し食傷気味のようじゃ。外が見たい」<br />「お外はあんなに綺麗じゃないよ？」<br />　不思議そうに尋ねる深影に女は答えた。<br />「ここにいては、何も見えぬ、何もわからぬ。世俗はどんな姿であるのか？　今のわらわにはどんな刺激も充分な糧になるのだ」<br />　女の言葉は難しすぎて深影にはよくわからなかった。<br />　ただ、この人に外の世界を見せてあげたかった。<br />　<br />　ようやく、敷地の外に通じる壁が見えてくる。<br />　深影が目指すのは一本の大樹が斜めに生えて壁と隣接して枝葉を伸ばしている場所だった。<br />「ここから外に出られるのか？」<br />「うん」<br />　二人の格好では斜めになった木の幹に捕まっているだけで落ちそうなほど不安定だった。<br />　それでも何とか身を屈めて、美しい着物を汚しながら壁の上から張り出た枝に到着する。<br />「はあ……　何とも難儀であった」<br />　二人顔を合わせて笑いあった。<br />「これが外か……」<br />　女はため息をついて、その瞳に映った景色をまじまじと眺めた。<br />　見える風景は仏閣の塔や屋敷の連なる通りの木々、遥か遠くに高層ビルの連なる市内と山々が見える。<br /><br /><br />　空気が変わった。<br />　幼子は知らぬ。<br />　この女が誰であるのか。<br />　女は知らぬ。<br />　自らが何者であるのか。<br /><br />　不意に襲ってきた餓えに眼を見開いて、女は目の前の娘を見た。<br />　血の渇きがその身を蝕んでいく。<br />　女の意識は、その衝動に飲み込まれていく。<br />「如何……　逃げろ……」<br />「え？」<br />　振り向いた娘の首を女の指が握り絞めていた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />深影・・・・・幼子<br />女・・・・・姫様<br /><hr size="1" />　　<br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-140.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-137.html">次に進む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-15T05:08:28+09:00</dc:date>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 　高校を卒業すると鼎は空儀の家から御園の家に戻った。　それ以来、こうして二人が会うのは数年ぶりのことだった。「兄さんは元気？」「ええ、とても」「あなた、綺麗になったわね。昔はちんくしゃだったのに」「あなたこそ」　と、二人で顔を合わせて噴出した。「鼎……　結婚おめでとう」「よして頂戴よ。望んだ結婚じゃないわ」　途端に不機嫌な顔になって鼎は歩き出す。　その後ろを要も揃って歩く。「あの男はね。私を選んだん
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<![CDATA[ 　高校を卒業すると鼎は空儀の家から御園の家に戻った。<br />　それ以来、こうして二人が会うのは数年ぶりのことだった。<br />「兄さんは元気？」<br />「ええ、とても」<br />「あなた、綺麗になったわね。昔はちんくしゃだったのに」<br />「あなたこそ」<br />　と、二人で顔を合わせて噴出した。<br />「鼎……　結婚おめでとう」<br />「よして頂戴よ。望んだ結婚じゃないわ」<br />　途端に不機嫌な顔になって鼎は歩き出す。<br />　その後ろを要も揃って歩く。<br />「あの男はね。私を選んだんじゃない。私の名前と家柄が欲しかっただけなのよ。つまんない男よ」<br />　本気の言葉なのか要は計りかねた。<br />「それでも…　鼎が普通の女としての道を歩めたのなら、私は…」<br />「そうよ、こんな普通じゃない家に生まれた女は例外なく普通じゃないわ。気狂いだらけの呪われた家。こんな家、滅んでしまえばいい。ずっと、昔からそう思ってた。私には巴みたいに自由に外に飛び出す勇気なんてなかった。今でもね後悔しているのかもしれない……　ごめんなさい、忘れて」<br />　そう呟いた鼎は薬指にはめられた指輪をもう片方の指先で撫でた。<br />「旦那様は優しい？」<br />「こんな家に生まれた私が、人間の女だって事を思い出させたのは後にも先にも一人しかいないわ。人間って、こんな私でも変われるのかもしれない。あなたこそ幸せ？」<br />「娘がいるわ。今年で四つ」<br />「きっとあなた似ね。御園の女には似ない方がいいわ。呪われた血は呪われた家の中だけで十分よ」<br /><br />　風が吹いて、紅葉の葉が散る。<br /><br />　要は慌てて今の時刻を確認する。<br />「あ、深影を……　娘を置いてきてしまったの。まさかこんな遠くの方まで案内されると思わなかったから。あの子、ちゃんと行儀よく待っててくれるとよいのだけど」<br />「あら、どこに預けてきたのよ？」<br />「銀椿楼っていう庵にうちの磯村と一緒にいるのだけれど」<br />「あそこね。連れてってあげる。行きましょう」　<br />　紅葉の木々が連なる道を抜けて、二人はその楼閣へ向かう。<br /><br />「要様！」<br />　前方から走ってきた男が二人の所まで慌てた様子で駆けてきた。<br />「磯村じゃない？」<br />「これは…　鼎様。要様、深影様が見当たりませぬ」<br />　困惑の表情で磯村が告げる。<br />「何ですって？」<br />「うちのものに探させなさい。ひょっこり戻ってくるかもしれないわ」<br />「いえ、それが…　白い髪の女と幼い子どもらしき姿が奥の森に行ったのを見たという侍女がいまして」<br />「白い髪の女？」<br />　要は訝しげに首を傾げる。<br /><br />「何ですって？」<br />　蒼ざめた鼎が身震いして、そのただならぬ様子に二人は気がついた。<br />「何か知っているの？」<br />「磯村、要。駄目よ。その女はね。命世の蛇姫なんだから！」<br />　その言葉に要は声にならない悲鳴を上げて、よろよろと倒れそうになった。<br />「要様、しっかり」<br />　要の肩を支える磯村に叱咤するように鼎はせき立てた。<br />「早く！　急いで追うの！　あれは血に飢えた魔物なんだから！　私は鬼を呼ぶ」<br />　<br />　その言葉に弾かれたように要は走り出し、磯村もその後を追って走り出す。<br />　<br />　杞憂に終わればよい。<br />　鼎の胸に嫌なものがもやもやと湧き上がって心を包み込んだ。<br />　<strong>鬼笛</strong>を吹き鳴らし、緊急招集の合図を響き渡らせた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />磯村(いそむら)・・・・・空儀家使用人<br />空儀要(うつろぎかなめ)・・・・・鼎の乳母の娘。<br />御園鼎(みそのかなえ)・・・・・御園家長女<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-139.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-136.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-15T02:12:47+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>幕間／未確定記憶</title>
<description> 十数年前　秋と冬の館の境に三日月庵と呼ばれる、砂の庭と庵が一体化した建物がある。　四方を生垣に覆われ、滅多なことでは余人が近づけぬその庵は、御園家の当主の憩いの場として設けられた特別な場所だった。　庭を見下ろせる座敷に二人の男と女が差し向かいに座っていた。　　「空儀、まかり越してございます」　深々と頭を垂れて、畳に手をついた女がお辞儀をする。　目の前にいるのは御園家当主である御園鋼堂だった。「面を
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<![CDATA[ <center>十数年前</center><br /><br /><br />　秋と冬の館の境に三日月庵と呼ばれる、砂の庭と庵が一体化した建物がある。<br />　四方を生垣に覆われ、滅多なことでは余人が近づけぬその庵は、御園家の当主の憩いの場として設けられた特別な場所だった。<br />　庭を見下ろせる座敷に二人の男と女が差し向かいに座っていた。<br />　<br />　<br />「空儀、まかり越してございます」<br />　深々と頭を垂れて、畳に手をついた女がお辞儀をする。<br />　目の前にいるのは御園家当主である御園鋼堂だった。<br />「面を上げよ」　<br />　深い声がよく通って女の身を貫く。<br />　齢六〇を越えてなお衰えることのないその姿は油の乗り切った壮年の男、否、若さだけであればどんな男にも引けを取らないだろうと思わせた。<br />　その鋼堂の精力さは今も留まることを知らず、妾が両手で数えても足らないほどだと揶揄されていた。<br />　差し当たって憂慮されるのは後継者問題で、妾腹が跡取りとして名乗りを上げるのではないかという心配もあったが、この老人が生きている間は、少なくとも三男の白銀がもっとも有力であるとされていた。<br />　長男はと言うと、若い頃に家を飛び出したきり、一度も実家には戻らなかった。<br />　鋼堂は激怒して勘当を言い渡し、それ以来、長男のことに触れるのは御園家の最大の禁忌となっていた。<br />　それに似たのか、次男までが妹と家を飛び出して駆け落ちすると、御園本家とはきっぱり縁を切ってしまった。<br />　長男と次男の出奔騒ぎは流石の鋼の心臓を持つ鋼堂にも手痛かったらしく、長男が空儀の家の婿として迎えられることになったとき、あっさりとそれを許可している。<br />「あれはどうしている？」<br />「はい。毎日を面白く暮らしております」<br />　それを聞いて、鋼堂は身を震わせて笑った。<br />　このようにはっきりと鋼堂に意見を言うものは珍しい。<br />　だからこそ面白い。<br />「言うたな、あの道楽者めは嫁と孫だけ寄越して人形と戯れておるか」<br />「畏れながら」<br />　女は顔を上げて鋼堂の目をしっかりと見て告げた。<br />「あの方は今宵、神木より掘り出した形に神を宿すため、一日も家を離れられないのでございます。傀儡を扱うは神代より空儀の家の大事なれば、あのお方は我が家の宝ゆえ、我らが手放したがらないのでございます」<br />「ふはは！　やつも飛んだ家の女に惚れられたものよ。空儀は旧くから御園家の大事を任せる家柄、今さら過去のことでワシはとやかくは言わぬ。両家との繋がりは深い。これからもやつを引き立ててやってくれい」<br />「勿体無いお言葉、ありがたき幸せでございます」<br />　女は深々ともう一度礼をしてその場を辞した。<br />　<br />　三日月庵を出て、冬の気配が近づいて、すっかり色づいた銀杏の木の葉を眺める。　<br />　肩にかかった髪を後ろへ振り払い、眉の手前で揃えた髪が揺れる。　　<br />　白いスーツは無難だが、この雅な空間では返って野暮ったく思えた。<br />　要はため息をつく。<br />　<br />「浮かない顔をしているじゃない？」<br />　紅葉した木々の繁みの向こうから一人の着物姿の女が現れて声をかけた。<br />　妖艶な瞳に口元に皮肉っぽい微笑を浮かべた女が立っていた。<br />「鼎？」<br />　要は久方ぶりに会う乳兄弟の元に駆け寄った。<br /><br />　<strong>御園鼎</strong>――<br /><br />　鼎は御園家の長女で、その昔、ほんの一時の数年間を要の実家である空儀家で過ごした。<br />　乳母の元、その娘の要と共に育ったのだ。<br /><br />　鼎と要――<br /><br />　よく似た名前の二人は本当の姉妹のようだった。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />空儀要(うつろぎかなめ)・・・・・鼎の乳母の娘。<br />御園鼎(みそのかなえ)・・・・・御園家長女<br />御園鋼堂(みそのこうどう)・・・・・御園家当主<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-140.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-15T02:09:19+09:00</dc:date>
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<title>イメージＥＤ 楔／奥華子</title>
<description> イメージイラスト／かざあな[楔]終電後の誰もいない道に二人の悲しげな一つの影もう二度ともう二度と会わないと 心に誓い合った夏の夜ただ傍にいるだけで笑い合えたそんな日が続いてくと信じていたあなたを嫌いになるくらいならこのまま二人で夜になりたい最後の口づけ 触れるだけで痛いよ愛しい気持ちが溢れて貴方を壊す前に抱きしめて 貴方の腕であと１秒だけでもこうしていたいもう喧嘩する事ももうやきもち焼く事ももう顔を見
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<![CDATA[ <center><a href="http://blog-imgs-35-origin.fc2.com/e/p/h/ephemerall/03.jpg" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-35-origin.fc2.com/e/p/h/ephemerall/03.jpg" alt="" border="0" width="500" height="500" /></a><br />イメージイラスト／かざあな<br /><hr size="1" /><br /><object width="212" height="172"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/-2zv8eRwXwo&hl=ja&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/-2zv8eRwXwo&hl=ja&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="212" height="172"></embed></object><br /><br />[楔]<br /><br />終電後の誰もいない道に<br />二人の悲しげな一つの影<br />もう二度ともう二度と<br />会わないと 心に誓い合った夏の夜<br /><br />ただ傍にいるだけで笑い合えた<br />そんな日が続いてくと信じていた<br />あなたを嫌いになるくらいなら<br />このまま二人で夜になりたい<br /><br />最後の口づけ 触れるだけで痛いよ<br />愛しい気持ちが溢れて<br />貴方を壊す前に<br /><br />抱きしめて 貴方の腕で<br />あと１秒だけでもこうしていたい<br />もう喧嘩する事も<br />もうやきもち焼く事も<br />もう顔を見る事さえ<br />出来なくなるの<br /><br />不思議だね どうして人はすぐに<br />守れない約束をするのだろう<br />人の心を繋ぎ止めるものなど<br />どこにもないと知っているのに<br /><br />最後の言葉が 優しすぎて痛いよ<br />二人はお互いのこと<br />分かりすぎてしまった<br /><br />抱き寄せて 私の胸に<br />子供のような貴方の髪を撫でたい<br />もう横で笑う事も<br />もう横で眠る事も<br />もう名前呼ぶことさえ<br />出来なくなるの<br /><br />心を繋ぎ止められるものは約束じゃない<br />約束は自分への気休めなのだろうか…<br /><br />抱きしめて 貴方の腕で<br />あと１秒だけでもこうしていたい<br />もう喧嘩する事も<br />もうやきもち焼く事も<br />もう顔を見る事さえ<br />出来ないのなら<br />もう会いたくなっても<br />もう息が出来なくても<br />貴方を呼ばないと約束するから<br /><br />貴方を呼ばないと約束するから<br /></center><br /> ]]>
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<dc:subject>未分類</dc:subject>
<dc:date>2009-11-12T12:03:03+09:00</dc:date>
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<title>四九番目の記憶</title>
<description> 　それからの記憶は曖昧だった。　どうやって家に戻ったのかも、その後、飯を食べたのかも、時間が過ぎたのかもさえわからなかった。　喪失したものが何であるのかさえわからなくなっていた。　涙さえ枯れたようだった。　　気がつけば、俺は斎場に喪服姿で立っていた。　葬儀の席に参列する数人の親族たち。　俺の横に八雲と爺さんたちが並んでいた。　刀郷家の親戚縁者と一部の参加者のみのささやかな葬儀だった。　刀郷のおじさ
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<![CDATA[ 　それからの記憶は曖昧だった。<br />　どうやって家に戻ったのかも、その後、飯を食べたのかも、時間が過ぎたのかもさえわからなかった。<br />　喪失したものが何であるのかさえわからなくなっていた。<br /><br />　涙さえ枯れたようだった。<br /><br />　<br />　気がつけば、俺は斎場に喪服姿で立っていた。<br />　葬儀の席に参列する数人の親族たち。<br />　俺の横に八雲と爺さんたちが並んでいた。<br />　刀郷家の親戚縁者と一部の参加者のみのささやかな葬儀だった。<br />　刀郷のおじさんがそう望んだからだった。<br />　<br />　あの日、血に濡れた明日那の姿が焼きついたまま離れない。<br />　あれが明日那だと、未だに信じることができていなかった。<br />　棺に収められたその顔を見るのが怖かった。<br /><br />「綱義君、どうか、明日那の顔を見てやって欲しい」<br /><br />　総司の呼びかけに壊れかけた心で棺の前に立つ。<br />　あれから、一度も涙を流さなかった薄情な俺を明日那は決して許してくれないだろう。<br />　明日那が棺の中で眠っていたる姿が見えた<br />　今日になって初めて、はっきりと明日那の死を認識したとき、きっと悲しいと人は涙を流すはずなのに、乾いた目からは何も零れ落ちなかった。<br />　ただ、心が乾いて、乾いて、悲しいという心は麻痺して、心なんてどこにもなくなったようで、それが一番哀しかった。<br />　<br />　白木の棺に横たわり、顔だけ覗かせた明日那の顔は美しかった。<br />　こんなに綺麗な子だったんだ。<br />　でも、その瞳はもう俺を見ることはない。<br />　俺に話しかけて、面白くてわくわくする話をしてくれた唇は、もう呼びかけてくれることはない。<br />　その頬に触れて、柔らかい感触を指先に感じることもない。<br />　これまで過ごしてきた、過ごすはずだった時間、歳月、もう触れ合うことはできない。<br /><br />　そのとき、胸の奥でせき止められていた何かが崩れ落ちた。<br />　それまで綱義の心を圧し留めてきた何かが崩壊した。<br />　初めて涙が、熱く頬を濡らして、いつしか棺の前で泣き崩れていた。<br />　綱義の背にそっと手が添えられて、優しい手が泣く俺の頭を引き寄せて、胸に抱いた。<br />　喪服の黒が視界を覆う。<br />「御影？」<br />　涙に潤んだ顔の御影がそこにいた。<br />　御影と会うのは随分と久しぶりだった。<br />　喪失感に打ちのめされていた綱義を心配して、何度も訪ねてきた御影をずっと綱義は避けてきた。<br />「ごめんね…　思い切り泣いていいからさ…」　<br />　何で、お前が謝るんだ……<br />　謝るのは、謝らなきゃいけないのは俺なのに、何で優しい言葉をかけるんだ？<br />　言葉なき御影の涙が綱義の手に落ちる。<br />「悔しいよ…　あたし、とても苦しいよ」<br />　嗚咽が止まらなかった。<br />　二人とも抱き合うようにして涙を流して流して流し尽くした。<br />　<br /><br />　<br /><center>「泣きたいときは思い切り泣くといいんだよ」</center><br /><br /><br /><br />　初めて明日那と出会ったとき、たんこぶ抱えて泣く俺に彼女はそう言ったんだっけ。<br />　<br /><br /><br />　そして、その日を境に俺は剣を捨てた。<br /><br />　今から丁度、二年前の夏に――<br /><br />　揺れるバスの中で、隣で寝てしまった八雲の温もりが肩に触れた。<br />　思い出してしまった過去の傷痕がじくじくと綱義の胸に広がって、ふとこぼれた涙を拭った。<br /><br />　もう涙なんて、あのとき流し尽くしたはずなのに――<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />愛染御影(あいぜんみかげ)・・・・・中学生<br />勢田綱義(せたつなよし)・・・・・中学生<br />参列者・・・・・親戚その他<br /><hr size="1" />　<br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-134.html" title="前に戻る">前に戻る</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-12T11:51:11+09:00</dc:date>
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<title>四八番目の記憶</title>
<description> 　放心した綱義の肩を誰かが掴んだ。　制服姿のお巡りさんだった。　「近寄らないように」と警告する言葉を発して、現場から遠ざけるように強く押した。「嘘だ……」　あの血は誰のものなのか？　一瞬でもよぎった不吉な予感を否定して頭を振る。　肩に置かれた手を振り払う。　予想以上に力が篭っていたのか、お巡りさんは尻餅をついて転んだ。「ごめんなさい！」「ちょっと君ぃ！」　血に濡れた石畳を越えて、開け放たれたままの玄
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<![CDATA[ 　放心した綱義の肩を誰かが掴んだ。<br />　制服姿のお巡りさんだった。<br />　「近寄らないように」と警告する言葉を発して、現場から遠ざけるように強く押した。<br /><br />「嘘だ……」<br />　あの血は誰のものなのか？<br />　一瞬でもよぎった不吉な予感を否定して頭を振る。<br />　肩に置かれた手を振り払う。<br />　予想以上に力が篭っていたのか、お巡りさんは尻餅をついて転んだ。<br />「ごめんなさい！」<br />「ちょっと君ぃ！」<br />　血に濡れた石畳を越えて、開け放たれたままの玄関に飛び込んだ。<br />　玄関の脇に倒れた男の顔が目に入る。<br />　その顔には見覚えがあった。<br />　確か、刀郷家の使用人の老人だった。<br /><br />　無残にも背中を切り裂かれたその遺体を見て、一瞬、足が竦む。<br />　人目でそれが、人間離れした技か何かで切り裂かれたものと判別できるくらい生々しい傷痕だった。<br />　老人は玄関に半ば上がりこみ、手を廊下に伸ばしたままの姿で絶命していた。<br />　おびただしい血が散乱する現場はすさまじい匂いだった。<br />　一秒たりとも、正気の人間であれば留まりたくないだろう。<br />　込み上げてくるものを抑えて、老人が指差した先……<br />　そこには明日那がいるはずだった。<br />　最悪の予感がすぐそこに現実であった。<br />　靴を履いたまま道場に通じる渡り廊下を駆けて、破壊された道場の扉が見える位置まで来て立ち止まった。<br />　追いかけてくる人はいなかった。<br /><br /><br />「明日那？」<br />　一人の男が道場に蹲っていた。<br />　その足元はどろりとした血に濡れて、艶やかな道場の床を侵食していく。<br /><br />　破壊された扉、床、散乱する木材、飛び散った<strong>肉片</strong>――<br /><br />　赤く染まったぼろ雑巾のような<strong>何か</strong>を抱きしめて、男は深い慟哭を背中に表して泣いていた。<br />　どこか麻痺した頭で、綱義はこの家の主である刀郷総司の姿を認める。<br />　鼻を刺激する血の匂いに咽そうになる。<br />　背筋にぞっとするような何かを感じて気分が悪くなった。<br /><br />　それはこの場に残された、暴力的な何かの気配、悪意――<br /><br /><br />　明日那はどこにいる？<br />　道場を見回す。<br />　綱義の知る向日葵のような少女はどこにもいない。<br /><br />　何だ…<br /><br />　明日那はいない。<br />　きっと、助かったんだ。<br />　どこか遠い所で起こった出来事のように、現実身のない思考。<br />　暴漢が入り込んで、運悪く使用人のおじさんは殺されちまった。<br />　でも、明日那は逃げて、どこかに隠れて、助かったんだ。<br />　そうに違いない。<br /><br />「綱義君か？」<br />　肩を震わせて、背中を向けたまま総司が尋ねる。<br />「おじさん？　何があったんですか」<br />　ひどく冷静に聞く自分の声を膜が張ったような思考でぼんやりと見て聞いていた。<br /><br /><br />　明日那はどこにいるんだろう？<br /><br /><br />　総司は答えない。<br />「明日那はどこですか…　無事なんですよね？」<br />　一歩踏み出す。<br />　その血の海へ。<br /><br /><br />　おじさんは何を抱えている。<br />　その抱えたものは人間の形をしているように見えた。<br />　自分は何を見ているのだろう？<br />「ねえ、そこにいる人は誰なんですか？」<br /><br /><br />　見てはいけない！<br />　見てはいけない！<br />　見てはいけない！<br /><br />　頭の中で鳴らされた警鐘が遠くで聞こえた。<br /><br /><br />「駄目だ！　来てはいけない」<br />　総司の声が強く木霊する。<br /><br />　何を言ってるんだろう？<br /><br />　ただ俺はそのぼろきれをまとったものが<strong>何で</strong>あるのか知りたかった。<br /><br />　不意に羽交い絞めにされた。<br />　肩を腕を二人の老人が押さえ込んで、道場から引き離して、どちらかが綱義の顔を思い切り張った。<br />「もうやめい！　死者を穢すような真似はやめい！」<br />　その声は上擦っていた。<br />「明日那がいないんだ……」<br />　ぼんやりと呟いた綱義の肩を老人が支えるように言い聞かせた。<br />「しっかりせえ！　明日那ちゃんは……　死んどる……　総司の腕に抱かれとる……　親子の別れをせめて静かに見てやってくれ！」　　　　　　　　　<br />「死んだ？」<br />　<br /><br />　嘘だ……<br />　そんなことがあるわけがない……<br />　爺さんは嘘をついてるんだ……<br />　みんなか嘘をついているんだ……<br />　俺は今日ここで明日那と……<br /><br />　そこで…<br /><br />　俺の記憶は途切れていた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />老人の死体・・・・・刀郷家の使用人。殺害される<br />刀郷明日那(とうごうあすな)・・・・・中学生<br />刀郷総司(とうごうそうじ)・・・・・明日那の父<br />遠江義久(とうごうよしひさ)・・・・・真守神社の宮司<br />勢田綱輝(せたつなてる)・・・・・綱義の祖父<br />勢田綱義(せたつなよし)・・・・・中学生<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-133.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-135.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-12T05:08:34+09:00</dc:date>
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<title>四七番目の記憶</title>
<description> 　身を清め、洗い立ての日向の匂いのする道着に身を包んで、明日那はシンと静まり返った道場の端に正座する。　今日は宿敵で最愛の人と立ち会う日。　そう連想して、明日那は頬を染めると、火照った顔に手を当てて冷やす。　まるで七夕の夜の織姫のような心持になって、胸に手を当てて微笑んだ。　天の川を渡ってやってくる彦星をひたすら一年待ち続ける織姫はこんな気持ちだったのかもしれない。「セツナ君」　彼の名を呟く。　七
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<![CDATA[ 　身を清め、洗い立ての日向の匂いのする道着に身を包んで、明日那はシンと静まり返った道場の端に正座する。<br />　今日は宿敵で最愛の人と立ち会う日。<br />　そう連想して、明日那は頬を染めると、火照った顔に手を当てて冷やす。<br />　まるで<strong>七夕</strong>の夜の織姫のような心持になって、胸に手を当てて微笑んだ。<br />　天の川を渡ってやってくる彦星をひたすら一年待ち続ける織姫はこんな気持ちだったのかもしれない。<br />「<strong>セツナ</strong>君」<br />　彼の名を呟く。<br />　<strong>七夕</strong>の夜に竹の短冊に書いた言葉は、誰にも見せずにこっそりと結んだ。<br />　そこに明日那の想いを込めて、その想いを果たすときが今日というこの日だった。<br /><br /><br />　いつからだろう？<br />　彼のことを想うたびにこの胸の高鳴りを覚えるようになったのは？<br />　剣を向け合うときの高揚以外に、ただ一緒にいるだけで、この胸の弾みを感じるようになったのは？<br /><br />　いつからなんて関係ない。<br />　きっと、出会ったときから、ずっと好きだったのだ。<br /><br /><br />　正午に行われる対戦は、父の総司が急な役目のため不参加となり、代わりの立会人として、勢田家側から二人の立会人を出すことになっていた。<br />　手伝いの使用人も今日は暇を取らせて、家の中は静まり返っている。<br />　今、静まり返った屋敷には明日那一人しかいない。<br />　廊下の方から聞こえたかすかな音に瞑想を解く。<br />　目を開いて座禅を解くと、もう来たのかしらと、気もそぞろになっていた。<br /><br />　こんなことではいけない……<br />　これでは勝てない……<br /><br />　こんな私を<strong>セツナ</strong>君が許してくれるわけない。<br />　気を引き締めて立ち上がると、「どなたですか？」と、戸の向こうに感じた気配に呼びかけた。<br />　荒い息遣いが聞こえた。<br /><br /><br /><br />「ああ、もう。何で寝坊なんかすんだよ」<br />　狭い車内は表現しがたい匂いに包まれていて、否、それはアルコールの匂いなのだが、綱義は明言は避けて鼻をつまんだまま、窓を開ける。<br />「すまんなあ、昨日、こやつと若き頃の修行の研鑽で優れたのはどっちかで燃え上がってなぁ。それなら飲み比べで勝負ってなったんだ～」<br />　答えたのは遠江神社の神主である遠江義久だった。<br />　運転のハンドルを握るのは綱義の祖父の綱輝だ。<br />　二人とも何故かまだ顔が赤い気がするのだが、それは寝起きで顔がむくんでいるのだと綱義は無理やり自分を納得させることにした。<br />「頼むから無事に着いてくれよ……」<br />　ドンと車体が軽く浮いて、着く前に車酔いしそうだった。<br />　御所通りの武家屋敷界隈に差し掛かり、すぐに刀郷家の大きな蔵がある屋敷が見えてくる所で、車は急ブレーキをかけられて止まった。<br />「何？　何なんだ？」<br />　前の座席に思い切り鼻をぶつけて、鼻を押さえながら顔を上げた綱義は二人の呟きを聞いた。<br />「あれはなんぞ…」<br />「何かあったのか？」<br />　普段、人通りの少ない道に多くの人たちが立っている。<br />　群れを作ってある方向に顔を向けて指を指している。<br />　ここからでは聴こえないが何事かを論じ合っている。<br />　その方角に刀郷の屋敷があった。<br />　ただ事ではない雰囲気、胸騒ぎに駆られて綱義は車から飛び出した。<br />　制止する二人の声はすぐに聞こえなくなる。<br />「すいません。通してください」<br />　野次馬をかき分けて、門前の惨状を見て息を呑む。<br />　瓦が砕け散って、地面にその残骸が飛び散っている。<br /><br />　開け放たれた門の中に伺い見えたのは――<br /><br />　血に濡れた石畳だった。<br />　全身の血が引いて、頭の中が真っ白になった。<br />　あそこに濡れた赤は何だ？<br /><br />　血だ――<br /><br />　誰の？<br />　想像することを、思考することを脳は拒否した。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />刀郷明日那(とうごうあすな)・・・・・中学生<br />遠江義久(とおえよしひさ)・・・・・真守神社の宮司<br />勢田綱輝(せたつなてる)・・・・・綱義の祖父<br />勢田綱義(せたつなよし)・・・・・中学生<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-131.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-134.html" title="続きを読む">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-11T19:58:26+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>とある「科学の未来ガジェット研究室の憂鬱にようこそ！」の巻</title>
<description> 「つるやさん、こいつを見てくれ…　どう思う？」「馬鹿な…　無限、ループだと…」「その通り、君はもはや逃れることはできない」　まさか、そうなのか…　ついに組織が俺に辿り付いたというわけか。　俺の名前は鳳凰院凶真、「狂気のマッドサイエンティスト」だ。「ククク、ふぁははははっ！　ついにその時が来たのだな。認めてやろうではないかぁ　タイムリープを完成させた偉大な男の名前を讃えるがよい。お前は実に幸運だ。この偉
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<![CDATA[ <center><br /><a href="http://blog90.fc2.com/e/ephemerall/file/churuyasan.png" target="_blank"><img src="http://blog90.fc2.com/e/ephemerall/file/churuyasans.png" alt="" border="0" width="200" height="155" /></a><br /></center><br /><br />「つるやさん、こいつを見てくれ…　どう思う？」<br /><br /><center><object width="212" height="172"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/F4osPXYeZd0&hl=ja&fs=1&"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/F4osPXYeZd0&hl=ja&fs=1&" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="212" height="172"></embed></object><br /></center><br />「馬鹿な…　無限、ループだと…」<br />「その通り、君はもはや逃れることはできない」<br />　まさか、そうなのか…<br />　ついに組織が俺に辿り付いたというわけか。<br />　俺の名前は鳳凰院凶真、「狂気のマッドサイエンティスト」だ。<br />「ククク、ふぁははははっ！　ついにその時が来たのだな。認めてやろうではないかぁ　タイムリープを完成させた偉大な男の名前を讃えるがよい。お前は実に幸運だ。この偉大なる凶真様が歴史に名を刻んだ瞬間に立ち会えたのだからな！　く…　ぬぉぉぉ、鎮まれ！　我が右腕ぇ」<br /><br />　以下略<br /><hr size="1" /><br />　一週間ほど前にKONOZAMAに注文してたシュタインズ・ゲートがやっと届いたよ。<br />　２０時間ほどで最初のエンディングを迎えたものの、コンプリート率はまだまだの模様。<br />　最初はなんと言う陳腐理論、主人公中二すぎる展開に吹くんだけど、進める内にノメリ込む不思議！<br />　この中二臭…<br />　もいと同類の匂いだぉ、というか、登場人物みんな２ちゃん用語しゃべりまくりですぉ！<br />　居心地よすぎてワラタ＾＾ｖ<br /><br />　レビューの点数の高さはあながち偽りではないということか…<br />　思わぬ伏兵よ！<br />　だが、駄目だ！<br />　全然駄目だねぇ、モットタノシマセテくれよ、うへへ（あ、あっちの世界にインしたぉ！）<br /><center><br /><a href="http://blog-imgs-12-origin.fc2.com/e/p/h/ephemerall/4988648682757_500.jpg" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-12-origin.fc2.com/e/p/h/ephemerall/4988648682757_500s.jpg" alt="" border="0" width="200" height="200" /></a><br /><br />管理人が旅立ってしまったためしばらく更新はお休みですぉ～<br /><span style="color:#ff0000"><br />「見える！　見えるぞぉぉ！　ここは俺が求めた最後の幻想郷（シュタインズゲート）なのだぁぁ」　</center></span><br /><br /><br />　 ]]>
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<dc:subject>編集後記</dc:subject>
<dc:date>2009-11-11T14:34:14+09:00</dc:date>
<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>本編／未確定記憶</title>
<description> 　強い風が吹きつけて窓のガラスを鳴らした。　室内には二人の人物がソファに腰掛けていた。　時刻はとうに深夜を回り、壁時計の針が時を刻む音だけが響いている。　一人は御園家執政、室町楓と、もう一人は御園家嫡男の御園白銀だった。　楓は肩を露にした明るい緑のドレス、白銀は白いスーツのままの姿だった。　二人は沈黙を守ったまま何も話そうとしない。　その静寂を破るように隣室に通じる扉が開いて、白銀の妻の燐子が姿を
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<![CDATA[ 　強い風が吹きつけて窓のガラスを鳴らした。<br />　室内には二人の人物がソファに腰掛けていた。<br />　時刻はとうに深夜を回り、壁時計の針が時を刻む音だけが響いている。<br /><br />　一人は御園家執政、<strong>室町楓</strong>と、もう一人は御園家嫡男の<strong>御園白銀</strong>だった。<br />　楓は肩を露にした明るい緑のドレス、白銀は白いスーツのままの姿だった。<br />　二人は沈黙を守ったまま何も話そうとしない。<br />　その静寂を破るように隣室に通じる扉が開いて、白銀の妻の燐子が姿を現した。<br />「燐子。雪はもう眠ったのか？」<br />　白銀は隣室の扉を見やって尋ねる。<br />　部屋の向こうにはさらに寝室があって、娘の雪と円が休んでいた。<br />「はい、あなた」<br />「円ちゃんは？」<br />「あれからずっと意識を失ったままよ」<br />　そう告げる燐子のまぶたは少し赤く腫れていた。<br />「疲れただろう。もうお前も休みなさい」<br />「ええ、でも、あなたも楓さんもお疲れでしょう。お茶を淹れますわね」<br />「俺は熱いコーヒーを」　<br />「奥様、お茶ならば私が…」<br />「いいのよ。ここは私たちの家なのだから、楓さんはゆっくりしていて。私よりもずっと働いているのだもの」<br />「畏れ入ります」<br />　頭を軽く下げた楓に燐子は微笑を返して台所に向かう。<br /><br />「あれはやはり、そうなのか楓さん」<br />　あれとは、観衆の前で姿を変化させた円のことを指していた。<br />　白銀の問いかけに楓は言葉を選んで口を開いた。<br />「間違いなく、あれは<strong>破槌</strong>の現れです。先代の<strong>姫</strong>がお隠れになってから半年余り、今まで血が抑えられていたのは僥倖というものでありましょう」<br />「畜生！　やっぱり、そうなのか」<br />　両手で顔を覆って白金は吐き捨てた。<br />「血の目覚めはゆっくりと進行します。<strong>薬</strong>で発作は抑えられるでしょうが、今まで御園本家を避けていらっしゃった鋼様と巴様のお嬢様方では耐えられないかもしれません」　<br />「血に狂うか……」<br />　その自らの台詞に白銀は苦渋の表情を浮かべる。<br />「だが、静ちゃんのときは何もなかった。何で、円ちゃんに発現した」<br />「前回の儀式の折には先代は御存命でした。恐らく、覚醒は御姉妹共にありえた確立でした。ただ、より資格があった方にとしか推測を述べます」　　<br />「運命からは逃れられないか……　逃れるとも地獄の苦しみを背負うか。できるならばあの二人にその運命ってやつは背負わせたくなかった。いつも男ばっかりが残されちまう」<br />　無力さを吐露して、白銀は天を仰ぐ。<br /><br /><br />　あのとき、変身を遂げた円の元に一目散に駆け寄ったのは白銀だった。<br />　テーブルクロスを剥ぎ取り、倒れた少女の姿を隠すように覆って抱き上げた。<br />　振り返ると、父、鋼胴が立っていた。<br />「親父！　これがあんたの望んだ茶番か！　こんな御園のやり方をいつまで続ける気だ！」<br />「それが御園だ。御園がそうであり続ける。それが輪廻の楔！　逃れられぬならば飲み込むしかあるまい。白銀よ、貴様も御園の男であるならば、総てを飲み込んでみせよ」<br />「くそったれだ！」<br />　立ち去る鋼堂の背中に白銀の闘志のこもった視線が投げかけられる。<br />「繰り返してたまるかよ！　俺は俺の守るものをそんなものにさらわせさせやしねえ！　お袋だって望んじゃいなかった。犠牲の上に成り立つ輪廻なんてくそくらえだ」<br />　独白して、腕の中で気を失った少女の体を抱き寄せると、壇上の下に駆け寄ってくる妻燐子と雪の姿が目に入った。<br />　ただ俺は愛するものを守りたい。<br />　渡しやしない、俺の家族の未来を奪う権利など誰にもないのだから、例えそれが神って奴でも同じだ。<br />　だから、俺は抗い続けてやる。<br /><br />　神に喧嘩を売ってでも――<br /><hr size="1" />　<br /><strong>登場人物</strong><br />御園鋼堂(みそのこうどう)・・・・・御園家当主　<br />御園白銀(みそのはくぎん)・・・・・御園家嫡男<br />御園燐子(みそのりんこ)・・・・・白銀の妻　<br />室町楓(むろまちかえで)・・・・・御園家執政<br /><hr size="1" /> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
<dc:date>2009-11-10T19:36:33+09:00</dc:date>
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<title>四六番目の記憶</title>
<description> 　例え、どんなことがあろうと、たった一人の女の子に勝ちたいという気持ちに変わりはなかった。　剣道へ向けられていた情熱、それはまさに一つの恋のようなものだった。　だが、それも明日那がいたからこそだった。　雑念を振り払うように綱義は道場で竹刀を振るう。　明日那に剣がやっと届くようになったのはここ三年のことだ。　二勝一分、それまで二敗。　明日那は女の子としては異例なくらい強い。　でもそれは女の子としては
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<![CDATA[ 　例え、どんなことがあろうと、たった一人の女の子に勝ちたいという気持ちに変わりはなかった。<br />　剣道へ向けられていた情熱、それはまさに一つの恋のようなものだった。<br />　だが、それも明日那がいたからこそだった。<br /><br />　雑念を振り払うように綱義は道場で竹刀を振るう。<br />　明日那に剣がやっと届くようになったのはここ三年のことだ。<br />　二勝一分、それまで二敗。<br /><br />　明日那は女の子としては異例なくらい強い。<br />　でもそれは女の子としてはだった。<br />　身長も腕のリーチも、体力もすべてにおいて勝る男の力は、技術に劣る綱義をカバーして、ここ三年の健闘に結びついていた。<br />　けれど、綱義は一度も勝ったという気持ちになったことがない。<br />　ただ、追いついただけなのだ。<br />　<br />　今年こそ、明日那に勝ってみせる。<br />　それだけの気持ちでこの一年を過ごしてきた。<br /><br /><br />「セツナ君、約束だよ。もし、私が勝ったら……　私が勝てたら、私と付き合って欲しい」<br /><br /><br />　あの言葉が頭の中で繰り返される。<br />　何度も何度も、雑念が脳裏を支配する。<br />「駄目だ」<br />　訓練に身が入らない。<br />　あれが明日那の作戦だったならどんなにいいことか。<br />　そんなことをするような娘ではないことは綱義自身が良く知っていた。<br /><br />　本気の言葉だった。<br />　だからこそ、こんなにも苦しい。<br />　いっそ負けてしまったら？<br />　考えたくなかった。<br />　そうしたらどうなる？<br />　二人ともきっと、後悔するのだ。<br />　　　<br /><br />「勝ちたい、勝ちたい！　俺は明日那に勝つ！」<br />　弱弱しい心を奮い立たせるために叫んだ。<br />　竹刀を握り締め、振り下ろす。<br />　忘れるな俺！<br />　自分を見失うな。<br />　俺が勝って、そうしたら…<br />　俺と付き合ってください。<br />　そう言えばいいんだ。<br /><br /><br />　決心はついた。<br /><br /><br />「もしもし…　明日那か？　ちょっといいか」<br />　電話の受話器の向こうの明日那が躊躇って、うんと答えた。<br />「ふははは！　明日那、あんなこと言って俺の動揺を誘おうなんて十年早いんだよ。俺はお前に勝って、ぎったんぎったんにしてやるからな！　満福亭のお好み焼き一年奢らせてやるわ～」<br />　内心、ドキドキしながら述べた口上は上擦っていた。<br />「こ、今年の俺ははっきり言って強い。手加減しやがったら、後でぶん殴るぞ」<br />「うん…　よ、容赦しないよ。<strong>セツナ</strong>君なんてボコボコのギッタンギッタンにしてやるんだからね」<br />「おう……　本気でこい。俺は全力だ。あのな…」<br />「はい？」<br />「勝つにせよ、負けるにせよ。俺は後悔したくない。全部終わったらきちんと話がしたいんだ」<br />「はい……　全部終わったら、私も話したいよ」<br />「それじゃあな…」<br />「うん、お休みなさい」<br />　切れた受話器の向こうのツーツーという音を聞きながら、不意に切なさに襲われる。<br />　会いたかった。<br />　その気持ちを抑える。<br /><br />　俺ができる誠意はたった一つだけだ。<br />　全力でぶつかって、勝って、そして俺と付き合ってくださいと告白することだった。　<br />　そして一ヶ月はあっという間に過ぎ去った。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />勢田綱義(せたつなよし)・・・・・中学生<br /><hr size="1" /><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-42.html" title="前に戻る">前に戻る</a><br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-133.html">続きを読む</a> ]]>
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<dc:subject>鬼のなく夜に</dc:subject>
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<dc:creator>節</dc:creator>
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<title>本編／未確定記憶</title>
<description> 　暗い暗いその世界で、その少女は体を丸めて眠っていた。　月の光が優しくその身を照らし出し、柔らかく包み込んでいる。　その身には一糸も衣をまとわず、生まれしままの姿で眠っている。　少女の銀髪が揺れて、睫毛を震わせて、紅い双眸が瞬きをして見開いた。　月の浮かぶ虚空を見つめて、少女は自問自答した。　私は誰？　すぐに思い出す。　御園円――　それが私の名前だ。　ここはどこだろう？　狭間の闇――　意識を外に向ける
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<![CDATA[ 　暗い暗いその世界で、その少女は体を丸めて眠っていた。<br />　月の光が優しくその身を照らし出し、柔らかく包み込んでいる。<br />　その身には一糸も衣をまとわず、生まれしままの姿で眠っている。<br />　少女の銀髪が揺れて、睫毛を震わせて、紅い双眸が瞬きをして見開いた。<br />　月の浮かぶ虚空を見つめて、少女は自問自答した。<br /><br />　私は誰？<br />　すぐに思い出す。<br />　<strong>御園円</strong>――<br />　それが私の名前だ。<br />　ここはどこだろう？<br />　<strong>狭間の闇</strong>――<br /><br />　意識を外に向ける。<br />　すると、闇の中に篝火がぽつり、ぽつりと道を指し示すように順番に灯っていく。<br />　その先を追うと小さな社が遠くに浮かび上がる。<br />　紅い鳥居がいくつも連なって、奥へ奥へと誘うように蛍火が舞っていた。<br /><br />　裸身を起こして、恥ずかしさに体を手で隠す。<br />　<strong>誰もいない</strong>――<br />　それでも恥ずかしい。<br />　<strong>衣をここに</strong>――<br />　すると、宙に光の帯がいくつも現れて裸身の円の体を覆っていく。<br />　光はすぐに収まって、気がつけば深紅の着物に身を包んでいた。<br /><br />　ここはきっと、まだ夢の中なのだ。<br />　そう、自分を納得させて、円はそこへ向かって歩き出す。<br />　軽い坂を上がり、鳥居の群れの中、どこまで続いてるのかわからない道を歩く。<br />　やがて、道は終わり、その社に辿りつく。<br />　小さな本殿の扉がキィと音を立てて開く。<br />　その闇の中に浮かび上がるのは<strong>石舞台</strong>。<br /><br />　目眩を覚える。<br />　<br />　おいでませ<strong>破槌</strong>の神子――<br />　蛍火が囁きかける。<br />　<strong>石舞台</strong>の玉座へまかりこしくだされ――<br /><br />　玉座？<br /><br />　その<strong>石舞台</strong>に吸い込まれるように周囲の景色は消えて行く。<br />　闇の中、少女とその石だけが取り残されて、ぼうっと光っていた。<br />　<br />「よう、参った」<br />　どこからともなくその声が響いた。<br />　気がつけば目の前に……<br />　一人の女が<strong>石舞台</strong>に腰掛けていた。<br /><br />　その姿形は――<br />　<br />　流れるような白銀の髪と紫水晶の瞳を持つ女だった。<br />　そして、その身には何も身につけてはいなかった。<br />　女の美しい切れ長の目が楽しんでいるかのように円を見つめた。<br /><br />「あなたは…　どなたですか？　ここはどこですか？」<br />　喉を詰まらせそうになって、やっと紡ぎ出た言葉は拙い。<br />「わらわが誰であるか？　それはお主も知っていよう。わらわはそなた…　そなたはわらわ。ここはそなたが果てて、目覚めた場所よ。わらわもここで<strong>破槌</strong>の玉座を戴いたのじゃ」<br />「どういう意味ですか…　私、死んでません。生きています」<br />　戸惑いながら、円は目の前の女の圧倒的な存在感に消されそうな自分の心を奮い立たせた。<br />「死んだのだ。人間としての生をお前はとっくに終えておる。今までの姿は仮初のもの。あの男がお前を蘇生させたのだ」<br />　あの男……？<br />　たった一人、そう、一人だけ思い当たる男の姿を思い浮かべた。<br />「そうよ、その男。自分を人形師と言ったな。かの男が<strong>アスクレピオスの杖</strong>を用いて<strong>御園円</strong>の肉体と、お主の魂魄を呼び戻したのだ。我が眷属の秘宝を用いてな」<br />　心を読んだかのように言う女の言葉に円の思考は混乱していた。<br />　女は自らの右手を差し出し、その手の甲の<strong>蛇の紋様</strong>を掲げて見せた。<br />「嘘……」<br />　女は目を細めて笑う。<br />「嘘ではないことはお主が一番よくわかっておろう」<br />「その証拠はあるんですか」<br />　その問いかけに女は倦んだような顔をする。<br />「証拠など要らぬ。お主の存在そのものが証拠よ。その姿形、わらわと同じであろう？　<strong>破槌</strong>である証よ」<br />　円は自分の髪に手をやって見つめた。<br />　手触りのよさは記憶にあるとおりだった。<br />　だが、その自慢の黒髪は銀色に変質している。<br />「<strong>破槌</strong>ってなんなんですか？」　　　　<br />「かつて、神の眷属と呼ばれたものの末裔よ。長き年月により背負わされた呪いで今は見る影もないがの。<strong>破槌</strong>の血を引く者は、その血の発現が女に限られるのだ。もう何十、何百という女が血に目覚めたことか」<br />「私が<strong>破槌</strong>…」<br />「そうよ。その中でもお主は特別の一人のうちに入る」<br />「特別？」<br />　円の問いに女は機嫌よく頷いた。<br />「わらわと直接話をする名誉を賜ったのはほんの数人に限られる。大概はわらわの声を聞く前に自ら命を立つか、気が狂って死ぬ」<br />「そんな…　あなたは…　いったい誰なの？」<br />　ふふふと笑って女は円を舐め尽すように見下ろした。<br />　その様はまるで蛇のようだった。<br />「わらわも名はとっくに忘れ果てた。わらわのことをきゃつらは真祖と呼ぶがの」<br />「真祖？」<br />「わらわのことは真祖様と呼ぶことを許すぞ。夜明けが近い。わらわはもう引っ込むとしよう。また話を聞かせてたもれ」<br />「待って」<br />　円の制止は届かない。<br />　闇の世界に光が差し込んで崩壊が始まる。<br /><br />　居心地のよい眠りから覚めて、円は柔らかい布団の中にいた。<br /><hr size="1" /><br /><strong>登場人物</strong><br />真祖・・・・・きゃー蛇姫さまー<br />御園円(みそのまどか)・・・・・高校生<br /><hr size="1" />　<br /><a href="http://ephemerall.blog90.fc2.com/blog-entry-77.html" title="前に戻る">前に戻る</a> ]]>
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